精選版 日本国語大辞典 「あぐり」の意味・読み・例文・類語
あぐり
- 〘 名詞 〙 女の子ばかり生まれて男の子が生まれない時、これが最後の女児であるようにという希望で付ける名前。また、生まれた子がうまく育たない家で、この名を付けるとその女の子は順調に成育するともいう。
- [初出の実例]「西田嶋内田二町・在家一宇、あくり御前に譲所也」(出典:岩松新田文書‐弘安元年(1278)一〇月三日・道覚譲状写)
あぐりの語誌
菅江真澄は「溢(あふ)れる」の意の東北方言「あぐる」の名詞形であるとして、「信濃、越後、出羽、陸奥などに、あぐりといへる女房の名あり。そは女子あまた産(もち)て女子に飽く〈秋田津軽詞に溢る事をあくるといへり〉てふ意をもてしかいへり。かくてあぐりこと末なる女子を名づくれば、こたびは必ず男子生めりといふためしありけるとなん」〔しののはぐさ〕と言い、また喜田貞吉は「あまり」の意の転じた語〔あぐりといふ名、あぐりという姓〕という。