イネ科(読み)イネか

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イネ科」の意味・わかりやすい解説

イネ科
イネか
Gramineae

単子葉植物イネ目の1科。全世界にわたって 600余属1万種もあり,キク科と並んで種子植物で最も大きな科とされる。生育環境は熱帯から周極地,海岸から高山帯,さらに砂漠にいたるまでほとんどあらゆる地域に広がり,南極大陸にまで及んでいる。このような多様な環境に生えながら,キク科とは対照的にこの科の植物の外形はみなよく似ており,節のある茎とひげ根,線状で2列に並ぶ平行脈の葉,独特の構造の花 (小穂) をもつ点で他の類とは明瞭に区別できる。なお,英語で grassと呼ぶのは「草」全体ではなく,このイネ科の草にほぼ限られる。葉は茎の節ごとに1枚が互生し,全体としては向き合って2列に並ぶ。葉の基部は長い鞘をつくって茎を抱き,この鞘はしばしば癒合して管となる。鞘と葉身の分れる部分に膜質の突起があって「葉舌 (または小舌) 」と呼ぶが,その形状はイネ科植物の分類上重要である。花は茎頂に複雑な花序をなしてつくが,その基本単位とされるのが「小穂」である。種類によっては花序がただ1個の小穂でできていることもある。小穂の構造は,軸の基部に2枚1対の包頴 (ほうえい〈それぞれを下のものから順に外包頴,内包頴と呼ぶ〉) があり,その上にさらに2枚の頴があってこれを外花頴と内花頴という。この外花頴,内花頴にはさまれて3本のおしべと1本のめしべがあり,これが本来の花に相当する。外花頴,内花頴とおしべ,めしべでできた花は1小穂上に1個のものから多数並ぶものまでさまざまである。また,外花頴や内花頴はしばしば退化し,最下位の2枚の包頴 (外包頴と内包頴) の上に直接おしべとめしべが乗って見える場合もある。これらの違いをもとにイネ科をイチゴツナギ亜科,キビ亜科,および木本性のタケ亜科に大別し,タケ亜科についてはイネ科から独立させてタケ科 Bambusaceaeを立てることもある。なお,このほか分類には諸説がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イネ科」の意味・わかりやすい解説

イネ科
いねか
[学] Poaceae
Gramineae

単子葉植物。おもに草であるが、タケ亜科のものはすべて木である。中国名は禾本(かほん)科。いままではユリ科に類縁があると考えられていたが、最近の分類系ではツユクサの仲間にもっとも関連が深いと信じられている。

 花は通常両性、規則正しく左右2列に並んだ包葉(外から第1、第2包穎(ほうえい)、護穎、内穎)に囲まれ、小穂を形成する。花被(かひ)は通常2枚、微細な鱗被(りんぴ)に退化し、雄しべは3(1~多数)本、葯(やく)は2室で丁字(ていじ)状に花糸につく。雌しべは1室1胚珠(はいしゅ)、柱頭は通常羽毛状をなし、2(1~3)本。果実は乾果(穎果(えいか))で、薄い果皮と種皮は密着し、基部外側に胚(はい)をもち、胚乳はデンプン質である。葉は2列に並び、上部につくのは葉身で通常は細長く、基部は葉鞘(ようしょう)になって茎を抱く。葉身と葉鞘の継ぎ目に葉舌(ようぜつ)があり、葉耳(ようじ)をもつこともある。小穂は1ないし多数の小花をもち、包穎は中に花をもたない。小花は外側に護穎、その内側に2脈もつ内穎があり、花部を包む。小花間には小軸がある。

 世界に広く分布し、約700属、8000種を数える。作物芝生雑草として普通にみられる。茎が木質のタケ亜科、熱帯に根拠地をもつイネ亜科、湿地に多いダンチク亜科、温帯にみられるイチゴツナギ亜科、暑さや乾燥に強いヒゲシバ亜科、2小花をもち暖地に生育するキビ亜科などに分けられる。日本では、北海道から九州にかけてはイチゴツナギ亜科の仲間が主であるが、温暖な沖縄ではキビ亜科の仲間が主になる。

[許 建 昌 2019年8月20日]

 APG分類でもイネ科とされる。

[編集部 2019年8月20日]


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