インターネットなどの情報技術(IT)を駆使して製造業の革新を促す巨大プロジェクト。ドイツで2011年に提唱された概念で、蒸気機関の発明による第一次産業革命、電気による第二次産業革命、コンピュータによる第三次産業革命に続き、インターネット導入による生産自動化を第四次産業革命と位置づけ、インダストリー4.0とよばれる。ITやセンサーを使って多くの企業や工場を結び、生産に関するデータを共有し、受発注から生産管理までを自動化するなど、生産過程のデジタル化を進めて生産効率を高める。同時に、消費者情報などのビッグデータをリアルタイムで把握し、マーケティングの精度をあげ、細かな消費者ニーズに対応した多品種少量生産に生かすねらいがある。インダストリー4.0は単に生産のみならず、物流、エネルギー、雇用など社会全体の変革を迫ると考えられている。
ドイツでは2013年に推進組織が発足し、ジーメンス、ボッシュ、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、ドイツテレコム、SAPなどの大手企業と連邦政府、州政府、大学、労働組合などが一体となってインダストリー4.0に挑んでいる。背景には、ドイツの国内総生産の2割、輸出額の9割を製造業が占め、新興国の製造業勃興(ぼっこう)に対抗し、ドイツ企業の国際競争力を向上させるねらいがある。2012年には、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が「インダストリアル・インターネットIndustrial Internet」という類似の概念を提唱し、2015年には中国政府が国家主導でIT革命による製造強国を目ざす「中国製造2025」計画を打ち出した。日本政府も2017年(平成29)に日本版インダストリー4.0というべき「コネクテッド・インダストリーズConnected Industries」戦略を発表し、人と機械・システムがつながることによる製造業の産業高度化に取り組む姿勢を打ち出した。いずれの概念・計画もインダストリー4.0と同じく、ITとビッグデータを活用して製造業の革新を目ざすという点は共通している。
[矢野 武 2019年3月20日]
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