オルミ(読み)おるみ(その他表記)Ermanno Olmi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルミ」の意味・わかりやすい解説

オルミ
おるみ
Ermanno Olmi
(1931―2018)

イタリアの映画監督。ベルガモ地方トレビリオに生まれる。演劇を志すが、ミラノに出て産業記録映画を40本演出、1959年から劇映画製作。『戦利品奪還者たち』(1970)では第二次世界大戦直後の職探しを、『事件の状況』(1974)では工業化社会にゆがむ庶民生活を描き、ネオレアリズモ、地方主義映画の俊英と目された。1978年カンヌ国際映画祭大賞受賞の『木靴の樹(き)』(1978)では、19世紀末のベルガモ農村の精密な年代記を非職業俳優、方言、生活の瞬間の連なりで描き、彼の名を世界的にした。その後『歩け、歩け』(1982)を製作。『偽りの晩餐(ばんさん)』(1987)では、学校で習ったできごとと現実の間で大きなギャップがあることを知るホテル学校の生徒6人の心の動きを描写した。また『聖なる酔っぱらいの伝説』(1988)はベネチア国際映画祭グランプリを獲得した。

鳥山 拡 2018年5月21日]

資料 監督作品一覧

戦利品奪還者たち I recuperanti(1970)
事件の状況 La circostanza(1974)
木靴の樹 L' albero degli zoccoli(1978)
偽りの晩餐 Lunga vita alla signora(1987)
聖なる酔っぱらいの伝説 La leggenda del santo bevitore(1988)
ジョヴァンニ l Mestiere delle armi(2001)
明日へのチケット Tickets(2005)
ポー川のひかり Centochiodi(2006)
楽園からの旅人 Il villaggio di cartone(2011)
緑はよみがえる Torneranno i prati(2014)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルミ」の意味・わかりやすい解説

オルミ
Olmi, Ermanno

[生]1931.7.24. トレビリオ
[没]2018.5.7. アジアーゴ
イタリアの映画監督。初期の作品では仕事と人間の関係を題材にし,のちに宗教や社会的テーマを掘り下げる作品を手がけた。科学高等学校からアカデミー・オブ・ドラマティック・アーツに進んだ。大手電力会社で働きながら映画制作を学ぶ。初の長編映画『時は止まりぬ』Il tempo si è fermato(1959)が好評を博したことを機に制作会社を共同設立し,最初の長編商業映画『定職』Il posto(1961)を発表した。のちに路線を変え,主としてカトリシズムや階級構造を題材にした作品を 1990年代まで制作した。19世紀末の農民家族の日常を 1年間にわたって描き,世界的に高い評価を得た『木靴の樹』L'albero degli zoccoli(1978)には,農家に生まれ育ったオルミの出自が反映している。1980年代には自身の最高傑作である『偽りの晩餐』Lunga vita alla signora!(1987)と『聖なる酔っぱらいの伝説』La leggenda del santo bevitore(1988)が,それぞれベネチア国際映画祭で銀獅子賞と金獅子賞を受賞した。

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