カルネ(読み)かるね(その他表記)Marcel Carné

デジタル大辞泉 「カルネ」の意味・読み・例文・類語

カルネ(Marcel Carné)

[1909~1996]フランス映画監督ペシミズムを漂わせた作風で知られる。代表作霧の波止場」「天井桟敷の人々」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルネ」の意味・わかりやすい解説

カルネ
かるね
Marcel Carné
(1909―1996)

フランスの映画監督。パリ生まれ。父の見習いで高級家具の製造を学ぶが、のち夜学で映画撮影の技術を学び、20歳でジョルジュ・ペリナールの撮影助手となる。またジャック・フェデー監督の助手として『外人部隊』『ミモザ館』『女だけの都』などについた。フェデーがイギリスに招かれて『鎧(よろい)なき騎士』を撮る際、フランソアーズ・ロゼー主演で準備されていた脚本による『ジェニーの家』(1936)で監督となり、女性心理の描写に師匠譲りの才能を発揮した。『霧の波止場』『北ホテル』(ともに1938)、『悪魔夜来る』(1942)などにみるように、運命的なドラマを好んで描き、ペシミスティックな人間観察を得意とした。最大の力作は、19世紀のパリ歓楽街に出入りする特異な人間群像をとらえた『天井桟敷(てんじょうさじき)の人々』(1945)。またゾラ原作の現代版『嘆きのテレーズ』(1953)では悲運な女の赤裸々な姿を冷静にとらえて秀作とし、これらの最盛期には詩的リアリズム名手とうたわれた。が、その後は振るわず『危険な曲り角』(1958)で現代の若者像に挑んだが古風なドラマ作風から抜け出せず、ヌーベル・バーグの台頭以降は時代に取り残された観がある。晩年テレビに移り80歳を超えてなお製作を続けた。

[登川直樹]

資料 監督作品一覧

ジェニイの家 Jenny(1936)
霧の波止場 Le quai des brumes(1938)
北ホテル Hôtel du Nord(1938)
陽は昇る Le jour se lève(1939)
悪魔が夜来る Les visiteurs du soir(1942)
天井桟敷の人々 第一部:犯罪大通り 第二部:白い男 Les enfants du paradis(1945)
夜の門 Les portes de la nuit(1946)
港のマリィ La Marie du port(1950)
愛人ジュリエット Juliette ou La clef des songes(1951)
嘆きのテレーズ Thérèse Raquin(1953)
われら巴里ッ子 L'air de Paris(1954)
遥かなる国から来た男 Le pays, d'où je viens(1956)
危険な曲り角 Les tricheurs(1958)
広場(ひろっぱ) Terrain vague(1960)
マンハッタンの哀愁 Trois chambres à Manhattan(1965)
若い狼たち Les jeunes loups(1967)

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百科事典マイペディア 「カルネ」の意味・わかりやすい解説

カルネ

フランスの映画監督。20歳の時映画界に入り,R.クレールやJ.フェデルの助手をつとめる。《霧の波止場》(1938年)でベネチア映画祭監督賞を受賞。《北ホテル》(1938年),《悪魔が夜来る》(1942年)など運命的なドラマを描いて戦前のフランス映画を支えたが,なかでも《天井桟敷の人々》(1943年―1945年)はスケールの大きな3時間余の大作。戦後の《嘆きのテレーズ》(1953年)は暗黒リアリズムの傑作として知られる。
→関連項目ギャバン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルネ」の意味・わかりやすい解説

カルネ
Carné, Marcel

[生]1909.8.18. パリ
[没]1996.10.31. パリ近郊
フランスの映画監督。 1930年『ノジャン,日曜日の楽園』 Nogent,Eldorado du Dimancheという短編記録映画を作って認められたが,ジャック・フェデーの助監督をつとめ,36年『ジェニイの家』 Jennyで一本立ちとなる。以後『霧の波止場』 Quai des Brumes (1938) ,『天井桟敷の人々』 Les Enfants du Paradis (45) ,『嘆きのテレーズ』 Thérèse Raquin (53) など詩的なリアリズムに満ちた名作を発表。フランス映画黄金時代を支えた巨匠の一人。

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