精選版 日本国語大辞典 「か」の意味・読み・例文・類語
か
[1] 〘係助〙
※竹取(9C末‐10C初)「なでう物をかなげき侍るべき」
② 「已然形(+ば)」「形容詞語幹+み」「未然形+ば」等、条件文を構成する種々の形式を受けて疑問の意を表わす。上代では「ば」を伴わない已然形を直接受けるものが圧倒的に多いが、中古以後は常に「ば」を伴う。
※古事記(712)中・歌謡「この御酒を 醸みけむ人は その鼓 臼に立てて 歌ひつつ 醸みけれ加(カ)も 舞ひつつ 醸みけれ加(カ)も」
[二] 文末用法。
※源氏(1001‐14頃)柏木「かしは木に葉守りの神はまさずとも人ならすべき宿のこずゑか」
② 已然形を受けて反語の意を表わす。「万葉」の東歌のみに見られる。
※万葉(8C後)一四・三五五九「大船を舳(へ)ゆも艫(とも)ゆも堅めてし許曾の里人顕さめ可(カ)も」
※中華若木詩抄(1520頃)中「春の帰るのみか。此の間相馴し。少年も春とともに帰るぞ」
[2] 〘副助〙
① (疑問の意を表わす係助詞の用法(一)(一)①から転じて)
(イ) 不定の意を表わす。
※中華若木詩抄(1520頃)中「若か故人の来りもやせんと思て」
※浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)下「御用にたてばわたくしも、なんぼうか嬉しいもの」
(ロ) 対等の関係に立つ語を受けて、選択の意を表わす。橋本文法では並立助詞とする。
※史記抄(1477)九「其人が死するかうするかすればやむるぞ」
※浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)中「けふかあすは戻られふ」
② =しか〔副助〕
※浅草(1931)〈サトウハチロー〉留置場の幽霊「僕はその女のところへ行った。一円二十銭かなかった女はそれでも、とめてくれた」
[3] 〘終助〙
① 文末において体言または活用語の連体形を受け、詠嘆を表わす。古代では、文中の「も」と相応ずることが多い。
※古事記(712)上・歌謡「庭つ鳥 鶏は鳴く うれたくも 鳴くなる鳥加(カ)」
※源氏(1001‐14頃)宿木「君がため折れるかざしは紫の雲に劣らぬ花のけしきか」
② 文末の連体形、または述語に用いられた体言を受け、疑問の意を表わす。近世以後の用法。→補注(2)。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「湯はいくらだ。十文か」
③ 文末において打消の語を受け、願い、誘い、同意を求める気持などを表わす。近世以後の用法。文語の「ぬか」の系統をひくもの。→(一)(二)③。
※洒落本・婦美車紫
(1774)高輪茶屋の段「吉原はまだできず、いっそ今から品川へおいでなされませんか」

④ 人名の下に付いて、呼びかけの意を表わす。江戸時代の上流語。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「彌寿か(常のことばなら、彌寿やとよぶ所なれども、此よめはいまだおやしきの詞うせぬゆゑ、やすか彌寿かと、かの声によぶなり)」
[補注](1)(一)(二)③の用法は、否定的な疑問の形によって相手に問いかけながら、相反する肯定的結果を期待し希望している点において、反語用法であるといえる。
(2)(三)②の用法は近世以前にもあるが、中世までは文中にあって疑問文を構成する係助詞の用法が存するので、文末疑問表現の場合も、係助詞の文末用法として扱う。→(一)(二)①
(2)(三)②の用法は近世以前にもあるが、中世までは文中にあって疑問文を構成する係助詞の用法が存するので、文末疑問表現の場合も、係助詞の文末用法として扱う。→(一)(二)①
か
〘副〙
※古事記(712)中・歌謡「賀(カ)もがと 我(わ)が見し子ら、かくもがと 吾(あ)が見し子に うたたけだに 向かひ居るかも い副ひ居るかも」
か
〘接頭〙 主として、形容詞の上に付いて、語調を整え、強める。「か弱い」「か細い」「か黒い」など。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「例ならひにければ、かやすく構へたりけれど、かちより歩み堪へがたくて、より臥したるに」
[補注]「万葉‐五一二」の「秋の田の穂田の刈ばかか寄り合はばそこもか人の吾(わ)を言なさむ」の「か寄り合はば」などを例に、動詞にも接するともいわれるが、この例の「か」は「かく」と同じ副詞とも考えられる。
か
〘接尾〙 情態的な意味を表わす語、または、造語要素に付いて、そのような情態であることを表わす。多くは、さらに「に」、または「だ(なり)」を伴って、情態副詞または形容動詞として用いられる。また、「やか」「らか」という形の接尾語として用いられることも多い。「あえか、いささか、おおろか、おもりか、おろか、さやか、しずか、なよよか、にわか、はるか、ほこりか、ほのか、みやびか、ゆたか」など。
か
〘名〙 (片仮名で「カ」と表記する) 数を表わす通り符丁。生糸商人仲間で二、遊芸人仲間で四、魚商人仲間で五、乾物・雑穀商人仲間で六を、それぞれいう。〔特殊語百科辞典(1931)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報