六訂版 家庭医学大全科 「くる病」の解説
くる病
くるびょう
Rickets
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
骨や軟骨が石灰化障害により、
原因は何か
以前は、ビタミンDの欠乏によるものが多くみられましたが、現在では食生活の改善に伴い減少しています。
主にビタミンDの作用不足によるものとして、ビタミンDの吸収不良などによるビタミンD欠乏、ビタミンDの活性化に必要な酵素が欠損しているビタミンD依存性Ⅰ型くる病、ビタミンD受容体の異常が原因であるビタミンD依存性くる病や腎臓の尿細管におけるリンの再吸収障害によるものがあります。
その他、骨や軟骨の腫瘍によるもの、遺伝子異常によるもの、薬剤が原因である場合もあります。
症状の現れ方
頭蓋の軟化、低身長、下肢の変形(O脚やX脚)、
検査と診断
単純X線写真では、
治療の方法
薬物療法としてビタミンD製剤を投与します。低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病では、ビタミンDとともにリン製剤も投与します。
下肢の骨折に対しては装具療法を、下肢の変形に対しては骨矯正術や骨延長術などの手術療法が必要な場合があります。
病気に気づいたらどうする
小児科専門医あるいは小児整形外科を専門とする整形外科医を受診する必要があります。
朝妻 孝仁
くる病
くるびょう
Rickets
(子どもの病気)
どんな病気か
くる病とは、成長期(骨の発育期)の小児でカルシウムが骨に沈着せず、軟らかい骨様組織が増加している状態をいいます。多くの場合、骨の成長障害および骨格や軟骨部の変形を伴います。
原因はビタミンD欠乏、ビタミンDの合成障害、ビタミンD受容体の異常、リンの不足、腎尿細管障害などさまざまです。
症状および検査
O脚、肋骨のこぶ(
くる病のいろいろ
①ビタミンD欠乏性くる病
ビタミンDは皮膚が紫外線の照射を受けて、コレステロールから生合成されます。しかし、乳児ではそれだけでは不十分なため、食物からの摂取が必要で、とくに極小未熟児ではビタミンD欠乏になりやすいことが知られています。また、アトピー性皮膚炎があるために著しい制限食を続けた場合にも、くる病になることがあります。
ビタミンDは、肝臓や腎臓で代謝されて活性体となるため、肝障害や抗けいれん薬摂取時、あるいは腎臓の病気では食事性の欠乏がなくてもくる病を発症することがあります。
②ビタミンD依存性くる病
ビタミンD依存性くる病には、Ⅰ型とⅡ型の2つの病型が知られています。Ⅰ型の原因はビタミンDを活性化する酵素の異常であり、活性型ビタミンDが産生されないために起こります。一方、Ⅱ型の原因はビタミンD受容体の異常です。
いずれも発症年齢、臨床症状とも類似しており、2歳未満で低カルシウム血症と骨のくる病性変化を起こします。見分け方としては、Ⅱ型において
治療は、活性型ビタミンD製剤の投与ですが、Ⅱ型の場合、治療困難な場合が少なくありません。
③低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病
腎臓でのリンの再吸収および腸管でのリンの吸収障害の結果、著しい低リン血症と過リン酸尿、くる病を起こす病気です。一般に
低リン血症などは生後早期には認めないことがあり、多くは生後1年ころに四肢の変形、歩行異常、歩行遅延、低身長などにより発見されます。
治療は、経口リン製剤および活性型ビタミンDの投与です。
山中 良孝
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報