けんか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「けんか」の意味・わかりやすい解説

けんか

兄弟げんか、親子げんか、夫婦げんか、友人同士のけんか、やくざのけんか、酔っぱらいのけんかなどに共通してみられる行動は、言い争い、殴り合い、傷つけ合いなど、2人またはそれ以上の当事者間相互の言語的ないし肉体的攻撃であり、闘争ないし葛藤(かっとう)状態にほかならないが、たいていの場合には相手を「打ちてしやまん」といったような深刻な闘争にまでは立ち至らない。とはいえ、「ふざけっこ」や「じゃれ合い」のような遊戯的な段階にとどまってもいない。まさに、真の闘争と遊戯的な争いとの中間に位置し、状況によって、そのどちらの方向へも傾斜する可能性をもっている。

[辻 正三]

けんかを生起させやすい条件

けんかが闘争ないし葛藤の状況である以上、その基底には自己の要求の阻害を含む自己領域の他者による侵害があるわけであるが、身近な相手のわずかな要求の阻止や領域の侵害に対しても、感情的・衝動的に怒りを爆発させ、相手もそれに感情的・衝動的に反発するのが特徴である。したがって、自他の認知を含む環境認知の未分化な幼児期においては、幼児同士や兄弟間のけんかが多くなる。地位勢力の上下関係がはっきりしている場合には、けんかになりにくいが、兄弟の力関係がはっきりしていなかったり、親子間でもそのどちらかがその身分役割を忘れて、相手と同等の立場にたったりすると、兄弟げんか、親子げんかが始まる。けんかの発端は、概して取るに足らない事柄から感情的に大きく広がっていくことが多く、闘争葛藤状態としては、原始的未分化な段階であるといえる。したがって、兄弟げんかを含む子供同士のけんかも、精神的・社会的発達が順当に進むにつれて減少するが、性格的に(1)顕示性が強く、(2)自制力がなく、(3)攻撃的・衝動的で、(4)家庭への適応が悪く、(5)個人的・社会的に不安定な者の場合には、いつまでもあちこちで衝突を起こす「けんか好き」になってしまうおそれがある。

[辻 正三]

けんかの限界と効用

ひと口にけんかといっても、遊戯やレクリエーションに近いものから、生命の危険にもなりかねない深刻なものまで多様なタイプが存在する。遊戯やレクリエーションに近いものは、止めに入ったりせずほうっておくほうがよいが、多少ともはっきりした利害対立や侵害があって当事者間では動きがとれないような場合には、適当な時点に第三者が介入し調停の役割を受け持つことが望ましい。その際いたずらに一方を支持し他方を非難するのではなく、当事者とともに問題の所在を解き明かし、双方が納得のいく解決に到達するのを援助する態度が必要である。元来、闘争ないし葛藤は人間存在の一つの自然な不可避的事実であるが、けんかも、真の対立や闘争の方向ではなく、民主的な討議や相互影響の方向へと発展するように心がけ、調整と建設に導くように努力すれば、よりよい人間関係の創造をもたらすための葛藤の解決法の訓練として役だつであろう。

[辻 正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「けんか」の読み・字形・画数・意味

【諠】けんか(くわ)

やかましく騒ぎたてる。〔史記、錯伝〕錯の(あらた)むるの令三十侯皆諠して錯を疾(にく)む。~(後)、楚七國果(はた)して反す。

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】けんか

おぎと、あし。水草。〔詩、秦風、として 白露、霜と爲る 謂(いはゆる)伊(こ)の人(水の女神) 水の一方に在り

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【喧】けんか(くわ)

やかましくさわぎたてる。〔後漢書、陳伝〕今京師囂囂(がうがう)として、路に喧す。言ふ、侯覽~等、~竝びに天下を亂し、附從するは升し、忤(ごぎやく)するは中傷せらると。

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華】けんか(くわ)

華やか。唐・劉希夷〔江南の曲、八首、七〕詩 自ら惜しむ、三五 已にず、關山の千重なるを

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苛】けんか

苛政を除く。

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荷】けんか

巻荷。

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【喧】けんか

字通「喧」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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