させる(読み)サセル

デジタル大辞泉 「させる」の意味・読み・例文・類語

させる[助動]

[助動][させ|させ|させる|させる|させれ|させろ(させよ・させい)]《古語助動詞さす」の下一段化したもの》動詞上一段下一段カ変活用未然形に付く。
使役の意を表す。「子供にすきなだけ食べさせる
(「させていただく」「させてもらう」の形で)相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す。「今月限りで辞めさせていただきます」「答えさせてもらう」
他の行動に対する、不干渉・放任の意を表す。「どうしても受験したいなら、受けさせるのだな」「好きなだけ食べさせなさい」
(多くは「させられる」「させたもう」の形で)尊敬の意を表す。現代では文語調の表現に用いられ、高い敬意を表す。「神よ、人々に恵みを垂れさせたまえ」→しむしめるせる
[補説]「させる」は「御覧させられる」「講ぜさせる」のように、サ変動詞の未然形に付くこともある。

さ・せる[動]

[動サ下一][文]さ・す[サ下二]《サ変動詞「」の未然形「せ」に使役の助動詞「さす」の付いた「せさす」の音変化から》
人にある行為をするようにし向ける。「勉強を―・せる」
「人ニ損ヲ―・スル」〈ロドリゲス日本大文典
するにまかせる。することを許す。「好きなように―・せる」
[補説]現代の口語文法では、「さ」をサ変動詞「する」の未然形の一とし、それに助動詞「せる」の付いたものとしている。

させ‐る[連体]

[連体]《動詞「さ(指)す」の已然形+完了の助動詞「り」の連体形から。あとに打消しの語を伴って用いる》特に取り立てていうほどの。さほどの。さしたる。
「皆、馬芸、―ことなき事どもなり」〈徒然・二三八〉
[補説]「然せる」とも書いて、副詞」に、サ変動詞「す」の未然形、完了の助動詞「り」の連体形が付いたものからとみる説もあるが、「指せる」からとする説に従う。→さしたる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「させる」の意味・読み・例文・類語

させる

  1. 〘 助動詞 〙 ( 活用は「させ・させ・させる・させる・させれ・させよ(させろ)」。上一段・下一段活用、カ行・サ行変格活用の動詞の未然形に付く )
    [ 文語形 ]さす
  2. ( 活用は「させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ」。上一段・下一段活用、上二段・下二段活用、カ行・サ行変格活用の動詞の未然形に付く )
  3. [ 一 ] 使役の意を表わす。
    1. 他にその動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表わす。…させる。
      1. [初出の実例]「月の都の人まうで来ば、捕へさせん」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「さて、宇治の里人を召して、こしらへさせられければ」(出典:徒然草(1331頃)五一)
    2. そのような動作、作用が行なわれることを許可する、またはそのまま放任する意を表わす。…のままにする。…させておく。武士ことばとして、受身の「らる」の代わりに用いられることがある。
      1. [初出の実例]「あながちに隠して心安くも御覧ぜさせず、なやまし聞ゆる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
      2. 「四郎左衛門も、内甲(うちかぶと)を射させて引き退く」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    3. 許しを依頼する意を表わす。
      1. [初出の実例]「此事務所をやめさせて下さいと云ひ出しかけて」(出典:菜穂子(1941)〈堀辰雄〉二)
  4. [ 二 ] 敬意を表わす。
    1. ( 尊敬を表わす語の上に付いて ) 尊敬の意を強める。
      1. [初出の実例]「御胸つとふたがりて、つゆまどろまれず、明かしかねさせ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      2. 「法皇もおそれさせ在(まし)ましければ、元日元三の間、参入する人もなし」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. ( 謙譲語「聞こゆ」に付けて ) 謙譲の意を強める。申しあげる。→きこえさす
      1. [初出の実例]「よろしうだに思ひ聞えさすべきことかは」(出典:枕草子(10C終)一八四)

させるの語誌

( 1 )助動詞「す」と接続の上で相補いあう関係にあり、意味は同一である。なお、動詞の活用語尾に準ずるものとして、接尾語とする説もある。
( 2 )中世後期(室町時代)になると、二段活用の一段化によって下一段活用となる。また、「いま一度重射さしたまへ」〔史記抄‐一一・孫呉〕、「少(ちっと)の間寝さして下さんせ」〔歌舞伎・傾城江戸桜‐中〕などのように、連用形が「さし」となって四段化した例も現われる。さらに、尊敬の用法が衰退し、「随員を従えさせられる」など、「られる」と重ねた形でのみ用いられる。


させ‐る

  1. 〘 連体詞 〙 ( 動詞「指す」の命令形に完了の助動詞「り」の連体形の付いた「指せる」が連体詞化したもの )
  2. ( 下に打消の語をともなって ) 特にこれというほどの。これといった。たいした。さしたる。
    1. [初出の実例]「させることなきかぎりはきこえうけ給はらず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「下ざまより事おこりて、させる本説(ほんぜつ)なし」(出典:徒然草(1331頃)六一)
  3. 特にこれと定めた。特にこれこれの。
    1. [初出の実例]「二の宮させる大名なれど、〈略〉工藤祐経をじょうきゃくにて」(出典:浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)二)

させるの語誌

平安時代には、歌合の判詞や公家の日記に例を多数見る。中世以降、「させる」は「さしたる」へと語形が交代していく。


さ・せる

  1. 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]さ・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 ( サ変動詞の未然形「せ」に使役の助動詞「させる(さす)」の付いた「せさせる(せさす)」の意に用いた語 ) 人に、ある動作をするようにしむける。
    1. [初出の実例]「おまへの朽木に生ひたるくさびらどもあついものにさせ、苦竹など調じて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
    2. 「もしもの変が起った時取り乱さない位の覚悟をさせるのも」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

五節舞

日本の上代芸能の一つ。宮廷で舞われる女舞。大歌 (おおうた) の一つの五節歌曲を伴奏に舞われる。天武天皇が神女の歌舞をみて作ったと伝えられるが,元来は農耕に関係する田舞に発するといわれる。五節の意味は...

五節舞の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android