しか
〘終助〙 自己の
動作に関する
願望を表わす。「てしか」「
にしか」の形で用いられることが多い。…したい。
※
続日本紀‐天平神護元年(765)閏一〇月二日・宣命「過無くも仕へ奉らしめて
志可(シカ)と念ほしめして」
※
万葉(8C後)三・三四三「なかなかに人とあらずは
酒壺になりにて師鴨
(シかも)酒にしみなむ」
[語誌](1)すでに
上代においても動詞連用形に直接付く例は限られ、
助動詞「つ」の連用形「て」に付いた「てしか」の例が多い。中古には、「しか」が付く場合にも、助動詞「つ」「ぬ」が使い分けられて、「にしか」の例も生じる。
(2)語形については、中世以後も「古今訓点抄」などに「てしか」と
清音に読んだ例が知られるが、近世以降、一般には「て
しが」「にしが」と「か」は濁る形で読まれている。
し‐か
(
助詞の「し」と「か」とがかさなったもの) 「いつ」「たれ」「なに」などの
疑問語に付いて、疑問の
意味をさらに強める。下にさらに助詞「も」の付くことが多い。→
いつしか・
なにしか。
※続日本紀‐天応元年(781)二月一七日・宣命「いつ之可(シカ)病止(い)えて参り入り来、朕が心も慰めまさむと」
※万葉(8C後)一五・三五八一「秋さらばあひ見むものを何之可(シカ)も霧に立つべく嘆きしまさむ」
しか
〘副助〙
体言・活用語の
連体形・
形容詞の連用形・
格助詞・
副助詞等をうけ、下に打消の語を伴う。肯定し得るものをそれだけと限定し、それ以外のものを否定する。
※
洒落本・角雞卵(1784か)後夜の手管「おいらがつかいこんででもいるとしかおもはねへはナ」
※雲のゆき来(1965)〈
中村真一郎〉一二「意識界が
言語によってしかお互いのメッセージを通じ合せられないのとは異って」
[
補注]まれに打消の語を伴わない例もある。「日本の
下層社会〈横山源之助〉日本の社会運動」に「明治二十五年は僅に大約九百九十七万七千貫しかの
産出にして」など。
し‐か
※
歌舞伎・
御摂勧進帳(1773)
二番目「ようも今迄うぬが女房を妹にして、此家主をよくもしかにかけやあがったな」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「しか」の意味・読み・例文・類語
しか[係助・終助]
[係助]名詞、名詞的な語、動詞の連体形、形容詞・形容動詞の連用形、一部の助詞・助動詞などに付く。打消しの語を伴って、特定の事柄以外のものを全く否定する意を表す。「この道を行くしかない」→きり →だけ
[補説]近世以降用いられ、限定の助詞に付けて「きりしか」「だけしか」「ほかしか」「よりしか」の形で、「しか」を強めていう場合もある。
[終助]自己の願望を表す。…たいものだ。→てしが →にしが
「まそ鏡見―と思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ」〈万・二三六六〉
[補説]過去の助動詞「き」の已然形からとか、あるいは連体形「し」に終助詞「か」が付いてできたものとかいわれる。上代では「か」は清音であったが、後世「しが」になった。「しか」だけで用いられることはまれで、多くは「てしか」「にしか」の形で用いられた。
し‐か[連語]
[連語]《副助詞「し」+係助詞「か」》「いつ」「たれ」「なに」などの疑問語に付いて、疑問の意味をさらに強める意を表す。
「玉くしげいつ―明けむ布勢の海の浦を行きつつ玉も拾はむ」〈万・四〇三八〉
しか[助動]
[助動]《過去の助動詞「き」の已然形》⇒き[助動]
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
普及版 字通
「しか」の読み・字形・画数・意味
【
華】しか
【
瑕】しか
【
貨】しか
【
卦】しか
【
火】しか
【市
】しか
【糸
】しか
【矢
】しか
【疵
】しか
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報