ステーン(読み)すてーん(その他表記)Jan Steen

デジタル大辞泉 「ステーン」の意味・読み・例文・類語

ステーン(Jan Steen)

[1626ころ~1679]オランダ画家農民市民生活を、風刺をまじえてユーモラスに描いた風俗画で知られる。代表作「聖ニコラスの祭り」。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステーン」の意味・わかりやすい解説

ステーン
すてーん
Jan Steen
(1626ころ―1679)

オランダの画家。ライデンに生まれ、同地に没した。ホーイイエンの弟子とされるが、同時にオスターデハルス影響も受けたと推定される。1648年、ライデンの画家組合に登録され、以後ハーグデルフトハールレムで制作活動を続けてさまざまな流派の技法を巧みに消化し、1670年ごろライデンに定住した。庶民の生活や風習に取材した風俗画家で、集団の描写に優れ、人間心理を集団のなかできめ細かく描いている。非常な多作家で、現存作品は約800点あり、『聖ニコラウスの祭り』(アムステルダム国立美術館)はその代表作。

[野村太郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ステーン」の意味・わかりやすい解説

ステーン
Jan Havicksz.Steen
生没年:1625か26-79

オランダの風俗画家。ライデンに生まれ同地で没。1646年ライデン大学に入学したのち画道に転じる。師としてはクニュッフェルNicolaus Knüpfer,ファン・オスターデAdriaen van Ostade,ファン・ホイエンの名が伝えられているが,はっきりしない。40年代末からハーグ,ライデン,デルフト,ハールレムの各都市で活動。非常な多作家であり,しかもライデン派の細密描写や滑沢な画面の仕上げ,デルフト派の親密な主題家庭の光景など)や合理的な室内空間構成などを次々にとり入れて消化し,つねに水準の高い作品を描いた。とりわけ彼の才能がみごとに示されているのは,都市の中流階級や農民たちの陽気で放埒な生活を題材にして教訓やことわざを盛り込んだ,機知と批判精神に満ちた一連の風俗画である。カトリック信者であったステーンは同時にまた,敬虔な宗教画や旧・新約聖書に取材した物語画をのこしている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ステーン」の意味・わかりやすい解説

ステーン
Steen, Jan Havicksz

[生]1626頃.ライデン
[没]1679.2.3. ライデン
オランダの風俗画家。醸造家の息子。初めはユトレヒトでクヌップフェルに,のちハールレムで A.オスターデに学んだ。 1648年ライデン聖ルカ組合員となり,翌年ハーグにおもむき風景画家ファン・ホイエンの娘を妻とした。その後デルフト,ハールレムに移り,70年ライデンに戻った。彼は生涯に約 500点に上る作品を残したと伝えられ,その絵は居酒屋の酔漢をはじめ,市民や農民の日常生活がユーモラスな筆致で描かれている。

ステーン
Steen, Johannes

[生]1827
[没]1906
ノルウェーの政治家。スウェーデンからの完全独立を目指す大国民民主党 (自由派) の創立者 J.スベルドリュープの後継者。首相を2度つとめ (1891~93,98~1902) ,ノルウェー独自の領事館設置をめぐってスウェーデンと対立。男子普通選挙を実現した (1898) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ステーン」の意味・わかりやすい解説

ステーン

17世紀オランダの代表的風俗画家。生地ライデンやハーグなどで活動。ブラウエルの影響を受け,農民や一般民衆の質朴な生活を温かいユーモアをまじえて活写した。代表作に《食前の祈り》(1662年―1665年,ロンドン,ナショナル・ギャラリー蔵),《乱れた家庭》(1663年,ウィーン美術史美術館蔵)などがある。
→関連項目テルボルフ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のステーンの言及

【風刺画】より

… 〈風俗画の世紀〉とよばれる17世紀のオランダ絵画では,画家は日常生活の営みに見いだせる矛盾,誤謬(ごびゆう),悪習を追求する。ヤン・ステーンは《肥った台所》で,〈そのように親が歌えば,子どもは笛を吹く〉というネーデルラントの諺を思わす,酒びたりの親とそれを模倣する男の子をコミカルに描く。それと同時に,乱雑な部屋や怠惰な飽食人間をも風刺している。…

【風俗画】より

…ただしここで大きな役割を果たしたのは,題材だけでなく,革新的なリアリズムの台頭であり,とくにルネサンスの古典的な美のカノンに反旗を翻したカラバッジョは,その斬新な主題解釈と表現(《マタイ伝》で,聖人を禿頭でよごれた足の労働者として描く)で,17世紀の北方の画家たちに強い影響を与えた。他方,プロテスタンティズムの勝利と国家の経済的繁栄によって富裕な市民の国となったオランダは,デ・ホーホの家事に励む主婦,ヤン・ステーンの家庭での市民の団欒(だんらん),フェルメールの手紙を読み奏楽する若い娘などの主題が愛好された。このころから〈主題の専門化の風潮〉(ゴンブリッチ)が決定的となる。…

※「ステーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android