内科学 第10版 「その他」の解説
その他(良性肺腫瘍および腫瘍類似疾患)(肺腫瘍)
肺Langerhans組織球症(pulmonary Langerhans cell histiocytosis)は,Langerhans細胞が肺で増殖し,炎症を引き起こすびまん性肺疾患である.多くは,成人の肺に限局しているが,約15%の症例で肺外病変を有する.全身性Langerhans組織球増殖性疾患は,クローン性増殖や腫瘍性増殖であるが,本疾患は反応性の非クローン性増殖とされる.日本の集計では男女比が約3:1で男性に多く,20~40歳を中心とする比較的若い年齢層に発症する.95%以上が喫煙者である.15~25%は無症状であるが,咳,呼吸困難感,胸痛などの呼吸器症状や,倦怠感,発熱,体重減少などの全身症状を呈するものがある.胸部HRCT所見は特徴的であり,両側,対照的なびまん性の小結節と囊胞病変が上中葉に広がり,肺底部の病変の程度は軽い.予後について,多くの患者は自然消退するが,約15%の患者で呼吸不全が進行する.治療としての禁煙は重要である.進行症例では,副腎皮質ホルモンや免疫抑制薬が効果を示すことがある.[長谷川好規]
■文献
Myers JL, et al: Benign Lung Tumors. Murray & Nadel’s Textbook of Respiratory Medicine 5th ed(Mason RJ, et al) pp1171-1185, Saunders, Philadelphia, 2010.
巽浩一郎,他:わが国における肺好酸球性肉芽腫症の検討. 厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班平成9年度研究報告書,39-41, 1998.
Travis WD, et al: Pathology and Genetics of Tumours of the Lung, Pleura, Thymus and Heart. World Health Organization Classification of Tumours. IARC Press, Lyon, 2004.
その他(めまい)
心因性めまいではグルグル回ると訴えるが,時計回りか反時計回りかを聞くと実は回転性ではなく,浮遊感・動揺感・頭がふわーとする感じなどである.背景に不安・緊張がある過換気症候群では症状は,動悸,空気飢餓感,手足のしびれ感,意識朦朧状態など多様であるが,めまいを訴えることが多い(図15-3-10).一時的には抗不安薬,β遮断薬が有効であるが,心理療法が不可欠である.うつ病では,うつ気分が表に出ず,めまい,頭重・頭痛を訴える仮面うつ病がある.うつ病の特徴である午前中に症状が強く,抗めまい薬は無効で,抗うつ薬が奏効する. 婦人科,眼科,歯科などの疾患に伴うものは表15-3-5に示した病態を念頭におき,病歴,症候を把握すれば診断しうる.[山本纊子]
■文献
Brandt T: Vertigo―Its Multisensory Syndrome, Springer-Verlag, London, 1991.
Epley JM: The canalith repositioning procedure: Fortreatment of benign paroxysmal positional vertigo. Otplaryngol Head Neck Surg, 107: 399-404,1992.
その他(中枢神経系疾患)
Parkinson症候群や脳卒中などで嚥下障害を起こすことがある.誤嚥のリスクがあり経口摂取が困難な場合は経管栄養が行われたりする.また腸管蠕動低下により悪心・嘔吐,食欲低下,便秘などの症状を生じることがある.特に長期臥床者や抗精神病薬併用者では腸管蠕動低下により腸管の拡張と高度な便秘を伴うことがあり,ときにS状結腸軸捻転をきたすことがある.典型例では腹部単純X線でcoffee beans signを認め,緊急内視鏡による整復が必要である.再発を繰り返すことが多く,難治例や絞扼例では外科手術が必要となる.[安藤貴文・後藤秀実]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報