そ
〘終助〙
① 「な…そ」あるいは「な…そね」の形で
動詞の
連用形(カ変、サ変の動詞だけは
未然形)をはさみ、
禁止の意を表わす。→語誌。
※
古事記(712)上・
歌謡「今こそは 我鳥
(わどり)にあらめ 後
(のち)は
汝鳥(などり)にあらむを 命は な死せたまひ
曾(ソ)」
※
万葉(8C後)二〇・四三三五「今替る新防人
(にひさきもり)が船出する
海原の上に波な開
(さ)き
曾(ソ)ね」
※
浄瑠璃・
心中宵庚申(1722)道行「なふおちよ、此もうせんをもうせんとな思はれ
そ」
② 活用語の連用形に下接し「そ」単独で禁止の意を表わす。院政期頃に現われ、
近世にはほとんど用いられなくなる。
※
今昔(1120頃か)一九「然はれ
其達(そこたち)は否不呑
(えのみ)そ」
※歌謡・松の葉(1703)二・玉くしげ「我通ひきと吹く嵐、よそには告げそ朝がらす」
[語誌]
上代では「な…そ」「な…そね」「な…」「…な」の四種の形でも禁止を表わした。中古には、「な…そね」「な…」は衰退し、「な…そ」が優勢になった。また、「な」が脱落した「…そ」の形で禁止を表わすようになったが、本来は「そ」に禁止の意はない。「そ」の単独
用法は、
中世かなり用いられたが、近世になるとやがて消滅した。
現代では「…な」だけが残っている。
そ
※万葉(8C後)一四・三四五一「左奈都良の岡に粟蒔き愛
(かな)しきが駒はたぐとも吾は素
(ソ)ともはじ」
※
義経記(室町中か)三「あともそとも言はば、一定事も出で来なんと思ふ」
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デジタル大辞泉
「そ」の意味・読み・例文・類語
そ[終助・係助]
[終助]サ変・カ変動詞の未然形、その他の動詞の連用形に付く。中世には、サ変動詞の連用形にも付く。
1 副詞「な」と呼応して、禁止・制止の意を表す。…てくれるな。…なよ。
「な恨み給ひ―」〈徒然・六九〉
2 副詞「な」は用いないで、禁止・制止の意を表す。…てくれるな。…なよ。
「かく濫がはしくておはし―」〈今昔・一九・三〉
[補説]上代は「な」だけで「そ」を伴わない例もあり、禁止の意は「な」のほうにあって「そ」は軽く指示するにすぎなかったといわれるが、院政期ごろから中世にかけて2の用法も現れた。
[係助]⇒ぞ
そ[感]
[感]
1 馬を追うときの声。
「左奈都良の岡に粟蒔きかなしきが駒は食ぐとも我は―ともはじ」〈万・三四五一〉
2 相手の注意を引く声。
「あとも―とも言はば、一定事も出で来なんと思ふ」〈義経記・三〉
そ[五十音]
1 五十音図サ行の第5音。歯茎の無声摩擦子音[s]と母音[o]とから成る音節。[so]
2 平仮名「そ」は「曾」の草体から。片仮名「ソ」は「曾」の初2画。
[補説]「そ」は古く[tso](あるいは[ʃo][tʃo])であったかともいわれる。室町時代末にはすでに[so]であった。
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そ
五十音図第3行第5段の仮名。平仮名の「そ」は「曽」の草体から、片仮名の「ソ」は「曽」の初めの2画からできたものである。万葉仮名には2類あって、甲類に「蘇、素、宗、祖(以上音仮名)、十(訓仮名)」、乙類に「曽、僧、増、憎、則、所(以上音仮名)、衣、苑、背(以上訓仮名)」などが使われ、濁音仮名としては、甲類に「俗(音仮名)」、乙類に「序、敍、賊、存、茹、鋤(以上音仮名のみ)」などが使われた。ほかに草仮名としては「
(所)」「
(楚)」「
(處)」「
(蘇)」などがある。
音韻的には/so/(濁音/zo/)で、上歯茎と舌との間で調音する無声摩擦音[s](有声破擦音[dz])を子音にもつ。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。
[上野和昭]
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