知恵蔵 「ふるさと納税」の解説
ふるさと納税
ふるさと納税が制度化された背景には、00年代の小泉純一郎内閣による「聖域なき構造改革」がある。その中で中央から地方へと称して、国と地方の「三位一体の改革」なるものが提唱された。(1)国から地方への補助金の削減、(2)地方交付税交付金の削減、(3)国から地方への税源移譲の三つを行うことで、地方分権と財政再建を進めるというものだった。しかし、東京都などとは異なり、地方交付税交付金に多くを頼ってきた地方公共団体は財源不足に陥り財政が悪化した。「ふるさと納税」は、こうした都市と地方の税収の格差是正を目的として検討された。08年の税制改革により制度化されたが、発足後数年間は件数10万件、寄付金額100億円に満たなかった。15年に制度改革が行われ、納税枠が約2割に倍増すると共に、条件を満たせば確定申告を行う必要なく住民税の減免が受けられるワンストップ特例制度が創設された。このため利用が急増、同年は件数700万件、金額1600億円を超え、共に前年度より約4倍増となった。また、豪華な返礼品が話題になったり、インターネットで寄付の申し込みができる仲介サイト(民間)が複数登場して宣伝したりといったことで衆目を集めた。こうして、17年度には1730万件、3650億円(18年度控除額2450億円、適用296万人)に迫るまでになった。総務省はふるさと納税の意義として、(1)寄付先を選択することで、その使われ方を考えるきっかけになる、(2)お世話になった地域、応援したい地域の力になれる、(3)自治体が取り組みをアピールすることで、自治体間の競争が進み、地域のあり方をあらためて考えるきっかけになる、の三つを掲げる。自治体が受け取る寄付は税収増ではなく、他の自治体の税収が移動したものに過ぎないが、受け取る自治体にとっては増収となる。このため、豪華な返礼品で競って寄付を促す自治体も出てきた。17年には、1万円の寄付に平均4000円もの返礼品が送られているとして、これを3000円以下に抑えるよう総務省が通知を出した。しかし、以降も返礼割合が3割を超える自治体は多数に上り、地場産品以外の商品や換金性の高いギフト券などを返礼品として付与するものも後を絶たなかった。こうしたことから、19年3月、返礼品を調達費が寄付額の3割以下の地場産品に限定し、これを逸脱する自治体は制度の対象外とする改正地方税法が可決、成立した。
(金谷俊秀 ライター / 2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報