改訂新版 世界大百科事典 「メイガ」の意味・わかりやすい解説
メイガ (螟蛾)
鱗翅目メイガ科Pyralidaeの昆虫の総称。昔から日本でイネの大害虫として知られているニカメイガの幼虫をメイチュウ(螟虫)あるいはズイムシ(髄虫)と呼んでいたので,この所属する科をメイガ(螟虫の蛾)と称するようになった。種数は,鱗翅目のなかで3番目に多い大きな科で,日本には600種以上が知られている。翅の開張1.5~3cmの小型種が多いが,なかには4cmを超える中型種も含まれる。一般に体は細長く,脚も長い。触角は鞭状のものが多く,翅は細長い。大部分は夜行性だが,ごく一部は昼間だけ活動する。幼虫の生活様式は多様だが,大部分は樹木や草本の葉を食べ,一部は果実や球果につく。茎や樹幹に潜入する種もある。また少数ではあるが,アブラムシなどを捕食する肉食性も発見されている。
この科の分類は今のところたいへん不十分だが,10~16亜科に分けられている。日本産は,次の9亜科に分類される。(1)オオメイガ亜科Schoenobiinaeは小さな亜科で,体翅とも白色種が多い。日本産は15種知られ,イネの大害虫サンカメイガ(イッテンオオメイガ),サトウキビの害虫シロオオメイガなどが含まれる。(2)ヤマメイガ亜科Scopariinaeは主として山地や寒冷地に多く,前翅が灰色で白線や黒褐色紋をもつじみな色彩の種を含む。日本産は15種。(3)ツトガ亜科Crambiinaeはイネの害虫ニカメイガを含む亜科で,日本から74種知られている。シバ類の害虫シバツトガやツトガもこの亜科に属する。(4)ノメイガ亜科Pyraustinaeはもっとも大きな亜科で,日本から300種近く知られている。アブラナ科の害虫ナノメイガ,ハイマダラノメイガ,トウモロコシやキビの害虫アワノメイガ,ホウレンソウ,フダンソウ,ウリ類につくシロオビノメイガ,各種の果実に食入するモモノゴマダラノメイガ,マツ類の針葉を食害するマツノゴマダラノメイガ,ダイズの害虫ウコンノメイガ,ワタやフヨウの葉を巻いて食べるワタノメイガ,沖縄でナスの実に穴をあけて食べるナスノメイガなど,害虫が非常に多い。(5)ミズメイガ亜科Nymphulinaeは日本産は30種くらい。幼虫が水生で気管腮(きかんさい)で呼吸するという特異な生活をしている種が多い。(6)ツヅリガ亜科Galleriinaeは日本産は18種。幼虫がミツバチの巣を食べるハチノスツヅリガは,養蜂上の害虫である。ツヅリガの幼虫は貯蔵穀物の害虫で人家や倉庫内にすむ。(7)フトメイガ亜科Epipaschiinaeはこの科のなかでは,体が太く,翅も強壮で,一見ヤガ科を連想させる種が多い。日本産は22種知られている。(8)シマメイガ亜科Pyralinaeは40種あまり知られ,コメノシマメイガやカシノシマメイガは乾燥食品の害虫として重要である。(9)マダラメイガ亜科Phycitinaeは日本から100種あまり記録されている。貯穀や乾燥食品の害虫として有名なノシメマダラメイガ,スジマダラメイガ,スジコナマダラメイガなどが含まれる。リンゴ,ナシ,ウメなどの葉を食べるツツマダラメイガ,豆類のさや内で大害を与えるシロイチモンジマダラメイガなど害虫が少なくない。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報