日本大百科全書(ニッポニカ) 「めんこ」の意味・わかりやすい解説
めんこ
江戸時代からある子供の玩具(がんぐ)で、泥、板、鉛、紙、ゴム、ガラス製などがある。面子とも書き、古くは面打ち、面形(めんがた)ともいった。最初泥製のものが登場した。直径3センチメートル、厚さ3、4ミリメートルほどの面型に、粘土を詰めて焼いた。江戸時代享保(きょうほう)年間(1716~1736)まず上方(かみがた)でつくられ、江戸中期以後幕末にかけて流行した。図柄模様に、当時の人気俳優の家紋、火消(ひけし)の纏(まとい)、相撲、芝居、地口、江戸地名、商売往来、英雄もの、文字、鳥居などがあり、種類は2000種にものぼった。遊び方は、地面に6から16くらいの区画を描き、一定の位置からめんこを投げ入れ、相手のものに重なれば自分の所得となり、もし線の上にかかれば逆に相手にとられる。この方法を江戸では「きず」といい、京では「むさし」、大坂では「ろく」などとよび、各地でそれぞれの名で流行した。
明治時代には、厚さ1ミリメートルほどの鉛の薄い板に、武者絵や花模様を彩色した鉛めんこが出現した。直径約3センチメートルのものを中心に、大小各種があり、円形のほかに武者絵の刀や槍(やり)の穂先の部分を突出させたり、力士姿をその体形のままにつくったものなどがあった。江戸時代の泥めんこにかわって1879~1880年(明治12~13)ころから現れ、日露戦争前後を頂点として盛んにもて遊ばれた。遊び方には、トーケン、カッパの2種があり、泥めんこと同じ方法で行われた。またトランプの銀行遊びのような遊び方もあった。
さらに明治後期からは、これらにかわってボール紙製の紙めんこが流行し、現在もみられる。円形の丸めんこのほか、しおり形の長(なが)めんこもある。遊び方は、地面の相手のめんこに自分のものをたたきつけ、横から風をおこして相手のものを裏返しにすれば勝ちとなる。めんこは地方によって、ビタ(青森)、ブッツケ(北関東)、ベッタン(関西)などと、いろいろによばれる。べいごま、ビー玉とともに賭(か)け事遊びとして、流行期には小学校で禁止されることもあった。
[斎藤良輔]