フランスの映画監督。モルビアン県バンヌに生まれる。幼いころから映画、文学、演劇を愛好し、パリの映画高等学院に学ぶ。第二次世界大戦後、映画編集の仕事をしながら、16ミリで短編映画の製作を始め、『ヴァン・ゴッホ』(1948)、『ゲルニカ』(1950)をはじめとする一連の美術映画、またアウシュヴィッツ(オシフィエンチム)のナチス強制収容所の生々しい痕跡(こんせき)と記憶とをモンタージュした『夜と霧』(1955)などが高い評価を受け、数々の賞に輝いた。1959年『二十四時間の情事』で長編劇映画にデビュー。過去と現在の交錯による記憶の映像化、ヌーボー・ロマンの作家M・デュラスによる脚本といった新しい試みがセンセーションを巻き起こし、ヌーベル・バーグの一翼を担うセーヌ左岸派(1950~1960年代のパリ、セーヌ川左岸に多く住んでいた進歩的、前衛的文学者、映画人、音楽家の一派)の代表となった。次作の『去年マリエンバートで』(1960)も、記憶に想像の世界を加えることによって前作以上の反響をよび、難解な映画の代名詞ともなった。その後も、記憶と時間のテーマを中心に、『ミュリエル』(1963)、『戦争は終った』(1966)、『薔薇(ばら)のスタビスキー』(1974)、『アメリカの伯父さん』(1980)、『人生は小説の如(ごと)し』(1983)、『メロ』(1986)や、アメリカとフランスのカルチャー・ギャップをコミカルに描いた『お家に帰りたい』(1989)、『スモーキング』(1993)、『恋するシャンソン』(1997)などを発表した。
[村山匡一郎]
ヴァン・ゴッホ Van Gogh(1948)
ゴーギャン Gauguin(1950)
ゲルニカ Guerunica(1950)
彫像もまた死す[クリス・マルケルと共同監督] Les statues meurent aussi(1953)
夜と霧 Nuit et brouillard(1955)
世界の全ての記憶 Toute la mémoire du monde(1956)
アトリエ15の記憶 Le mystère de l'atelier quinze (1957)
二十四時間の情事 Hiroshima, mon amour(1959)
スチレンの唄 Le chant du Styrène(1959)
去年マリエンバートで L'année dernière à Marienbad(1960)
ミュリエル Muriel ou Le temps d'un retour(1963)
戦争は終った La guerre est finie(1966)
ベトナムから遠く離れて~「クロード・リデール」 Loin du Vietnam - Claude Ridder(1967)
ジュ・テーム、ジュ・テーム Je t'aime, je t'aime(1968)
西暦01年 L'an 01(1972)
薔薇のスタビスキー Stavisky...(1974)
プロビデンス Providence(1977)
アメリカの伯父さん Mon oncle d'Amérique(1980)
人生は小説の如し La vie est un roman(1983)
メロ Mélo(1986)
お家に帰りたい I Want to Go Home(1989)
スモーキング ノースモーキング Smoking/No Smoking(1993)
恋するシャンソン On connaît la chanson(1997)
巴里(パリ)の恋愛協奏曲(コンチェルト) Pas sur la bouche(2003)
六つの心 Coeurs(2006)
風にそよぐ草 Les herbes folles(2009)
『ガストン・ブーヌール著、岡田利男訳『現代のシネマ5 レネ』(1969・三一書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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