下腿(かたい)後面のふくらはぎの下方からかかとの骨(踵骨(しょうこつ))に向かって走る、皮下に触れる索状の腱。解剖学名を踵骨腱という。ふくらはぎの筋である下腿三頭筋(腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋で構成)と踵骨とを結ぶ腱で、体のなかではもっとも強大な腱である。下腿三頭筋の急激な収縮によってアキレス腱に不自然な方向の伸張力がかかると、裂傷を生じることがあり(アキレス腱断裂)、ギプス固定あるいは縫合手術で治療する。なお、アキレス腱の名は、ホメロスの叙事詩『イリアス』に出てくる不死身の英雄アキレウスが、唯一の弱点であるこの腱に傷を受けて倒れたとの伝説からつけられたという。
[嶋井和世]
下腿軸と足とを直角の位置にしてアキレス腱をたたくと、足は足底(足の裏)側に反射的に伸展する。この現象をアキレス腱反射といい神経障害の検査に用いられる。この反射が正常でないと脊髄(せきずい)の仙髄部分やこの高さの脊髄神経の故障を疑う。
[嶋井和世]
アキレス腱の皮下断裂はスポーツ外傷として跳躍、疾走などの際におこる。腓腹筋(ひふくきん)が緊張状態にあるときに、足関節が急に強く背屈を強いられると断裂する。その瞬間に激痛を感じ、音を発することもある。つまさき立ちができなくなる。不完全断裂と完全断裂があり、ギプス固定あるいは手術が必要である。完治すればスポーツがふたたびできるようになる。
[永井 隆]
正式には踵骨腱(しようこつけん)tendo calcaneusという。本体は下腿三頭筋の停止腱で,踵骨に付着している。下腿三頭筋は,ふくらはぎの膨らみを作る筋で,したがってアキレス腱とともに,下腿の後面で皮膚の上からよく触れることができる。下腿三頭筋は,その名の示すとおり三つの筋から成り,最も表層にある腓腹筋には大腿骨下端の内外両側より起こる内側頭と外側頭があり,その深層に扁平で幅の広いひらめ筋がある。下腿三頭筋の作用は,アキレス腱を介してかかと(踵)を挙げ,また,つま先を下げる(足の屈曲)。したがって,歩行時や走るとき,または背のびをするときに働き,この筋が麻痺したり,急激な跳躍,疾走などによってアキレス腱が切断する(アキレス腱断裂)と歩行不能となる。アキレス腱断裂は腱の縫合が必要となる。なお,アキレスの名称は,ギリシア神話に出てくるトロイア戦争の勇士アキレウスに由来し,彼を不死とするため母によって冥界の川に浸されたが,この部分だけ水がかからず,これが弱点となり,のちこの部分を矢で射られて一命を失ったという伝説にちなむ。
執筆者:河西 達夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…テッサリア地方のフティア王ペレウスPēleusと海の女神テティスThetisとの子。赤子のころ,わが子を不死身にしようと願ったテティスによって冥界の川に浸されたが,母親の手がつかんでいたかかと(踵)だけは生身のままに残った(アキレス腱)。成人後,出征すれば早世する運命にあるとの母親の警告をふりきってトロイアに渡り,めざましい働きを示したものの,戦争の10年目に,捕虜の女奴隷をめぐる総大将アガメムノンとの争いがもとで戦闘を放棄,味方を敗北寸前にまで追い込んだ。…
…このほかに足底には数個の種子骨がある。これらの骨はいずれも皮膚の表面からさわることができるが,なかでも踵骨は,大きくて,強く後ろ下のほうに突き出してかかとの支柱をなし,また人体最大の腱,アキレス腱がつくので重要である。下腿と足根との間の関節は脛骨と腓骨の間に距骨がはまりこんでできるので,これを距腿関節という。…
…両頭は間もなく合して一つの筋肉となり,下腿の下半部で強大な停止腱に移行する。この停止腱を踵骨腱(俗にいうアキレス腱)といい,踵骨に付着して終わる。この腱には,腓腹筋の深層にあるひらめ筋も合して共同の腱をつくる。…
※「アキレス腱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新