アター(英語表記)‘aṭā’

世界大百科事典 第2版 「アター」の意味・わかりやすい解説

アター【‘aṭā’】

〈贈り物〉を意味するアラビア語であるが,イスラム史の用語としては,ムハンマド未亡人親族・功労者の年金,軍人官僚俸給を意味する。640年ウマル1世が,メディナと各ミスル(軍営都市)にディーワーンを設けて支給を開始した。アラブ戦士(ムカーティラ)のアターは年額で最高2000から最低300ディルハムで,大部分は最低額を割り当てられ,ほかにリズクを支給された。ミスルに移住してアターを支給されるのは,アラブの特権とみなされていたが,ムフタール反乱(ムフタールの乱,685)に際しマワーリーにもアターを支給し,それはウマイヤ朝カリフ,ウマル2世によって政府の政策とされた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アター」の解説

アター
‘aṭā’

初期イスラーム時代の俸給。軍人の場合は,軍人登録台帳(ディーワーン)に登録された戦士(ムカーティラ)のみに支給された。アラブの特権とみなされていたため,非アラブへのアター支給は,アラブ帝国内に対立をもたらした。

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世界大百科事典内のアターの言及

【マワーリー】より

…ウマイヤ朝の政治はアラブの非アラブ支配の原則に立ち,アラブは事実上の免税特権を享受し,征服地の非アラブ農民は重いハラージュを支払わされていた。7世紀末のサワードで,多くの農民がハラージュを免れるため農村を逃れてクーファ,バスラに集まったが,アラブの支持を得られなかったムフタールは,クーファで反乱(ムフタールの乱)を起こすにあたり,彼らをディーワーンに登録してアター(俸給)を支給し,兵士として利用した。その際,アターを受けるのはアラブ・ムスリムの特権と考えられていたので,これらの非アラブ農民のイスラムへの集団的改宗が行われた。…

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