アデノシン5′-三リン酸(読み)アデノシンサンリンサン

化学辞典 第2版 の解説

アデノシン5′-三リン酸
アデノシンサンリンサン
adenosine 5′-triphosphate

adenosine 5′-(tetrahydrogen triphosphate).C10H16N5O13P3(507.20).略号ATP生体中のエネルギー代謝,リン酸代謝にもっとも重要なヌクレオチド.アルコール発酵や解糖系の酸化過程で生成するリン酸エステルADPからつくられるほかミトコンドリアでの酸化的リン酸化,光合成における光リン酸化によりつくられる.ほ乳類の骨格筋に約0.3~0.4 g/100 g 含まれ,アデノシンのリン酸化により合成される.分解点143~145 ℃.-26.7°(水).λmax 259 nm(ε 15.4×103pH 7.0).1% 水溶液の pH は約2.0で,0 ℃ では数時間安定である.ATP分子は2個の高エネルギー結合(二リン酸結合)を含むので,ADP(pH 7で約33.5 kJ mol-1 のエネルギーを放出)やAMPへの加水分解により放出されるエネルギーは,生体の力学的(筋肉の運動,生物発光など),および代謝(核酸,そのほかの生体物質の合成や分解反応,および輸送)のエネルギーに用いられる.また,ATPはそのリン酸をほかの物質に転移させてその物質を活性化する.[CAS 56-65-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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