アフィン幾何学
あふぃんきかがく
ユークリッド幾何学から長さ、角の概念を取り去った幾何学をアフィン幾何学affine geometryという。ユークリッド幾何学より一般的であるが、射影幾何学より特殊な幾何学である。平面上の任意の斜交座標系に関して一次式
x′=ax+by+p,y′=cx+dy+q,
ad-bc≠0
によって与えられる点対応(x,y)→(x′,y′)をアフィン変換という。アフィン変換によって変わらない図形の性質を研究する学問がアフィン幾何学で、擬似(ぎじ)幾何学ともいわれる。x、yが一次式lx+my+n=0を満たせば、x′、y′も一次式を満たすので、直線はアフィン変換によって直線に移る。すなわち、直線はアフィン幾何学的概念であり、したがって、「3点が1直線上にある」「3点が三角形をつくる」はアフィン幾何学で意味をもつ。また「2直線が平行である」もアフィン幾何学的概念であるが、長さ、角に関する性質は意味をもたない。円はアフィン変換で楕円(だえん)に移ってしまうので、アフィン幾何学ではこれらを区別できない。ユークリッド幾何学は、アフィン幾何学のなかに一つの特別な計量(長さの定義)を持ち込んだ幾何学であり、別の計量を入れれば別の幾何学ができる。逆にいえば、アフィン幾何学は、多くの計量幾何学から計量に無関係な共通の性質を抜き出して調べる幾何学、ということができる。二次元の場合について述べたがn次元でも同様である。
[立花俊一]
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アフィンきかがく【アフィン幾何学 affine geometry】
擬似幾何学ともいう。クラインは1872年に有名な《エルランゲン・プログラム》を発表し,その中で幾何学を変換群の立場から統一的に論じ,例えば,図形の性質のうち,合同変換で変わらないような性質を調べるのがユークリッド幾何学であり,射影変換によって変わらない性質を調べるのが射影幾何学であると定義したが,この立場に立つとき,アフィン幾何学とはアフィン変換によって不変な性質を調べる幾何学といえる。この幾何学の源泉はメービウスの《重心算法論Der baryzentrische Kalkül》(1827)にあるが,新しい種類の幾何学として確立したのはクラインである。
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アフィン幾何学
アフィンきかがく
affine geometry
擬似幾何学ともいう。一般的にいえば,アフィン空間の中で構成される幾何学のことで,F.クラインが,『エルランゲン目録』において主張した立場によれば,アフィン変換によって不変な性質を研究する幾何学といえる。たとえば,線分,三角形,四角形は,アフィン変換によってそれぞれ線分,三角形,四角形に移り,円は楕円に移るが,線分の長さ,角,大きさなどは変化する。それゆえ,長さや角の概念はアフィン幾何学の対象とはなりえない。
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「アフィン幾何学」の意味・わかりやすい解説
アフィン幾何学【アフィンきかがく】
擬似(ぎじ)幾何学とも。アフィン空間の性質を研究する幾何学。またアフィン変換によって変わらない性質を研究する幾何学ともいえる。アフィン幾何学では長方形と平行四辺形,円と楕円は同等とみなされ,線分の長さ,角・面積などの計量的性質は意味をもたない。
→関連項目射影幾何学
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