改訂新版 世界大百科事典 「アマミノクロウサギ」の意味・わかりやすい解説
アマミノクロウサギ
Ryukyu rabbit
Amami rabbit
Pentalagus furnessi
ウサギ目ウサギ科中,もっとも原始的な種とされる奄美大島と徳之島特産の哺乳類。体色は上面黒褐色,下面灰白色。生息地の薄暗い林中では全身黒色に見える。体長35~55cm。耳介はウサギ類としては短く,4~4.5cm。カシなどの密林や木を切り倒した跡のカヤ原に生息し,谷川近くの急斜面に,アナウサギの巣穴に似るが,ずっと簡単な造りの巣穴を掘って小群ですむ。日中は巣穴で休み,夜間活動して,植物の葉,茎,樹皮,ドングリ,それにシダ類,ススキなどの芽を食べる。ノウサギに比べ後肢が短く,行動も敏しょうではないが,斜面を登るときはイヌよりも速いといわれ,2mに達するジャンプもできる。奄美大島では夜間林道に出ている姿を見かけることがあり,また,林中からピーッという独特のかん高い鳴声が聞かれる。雌は4~5月または10~12月ころに,通常巣から離れたなだらかな場所に,深さ1~2m,直径10~20cmの出産用の巣穴を掘ってふつう1子,ときに2子を生む。国の特別天然記念物に指定されている。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報