改訂新版 世界大百科事典 「アユモドキ」の意味・わかりやすい解説
アユモドキ
Leptobotia curta
コイ目ドジョウ科の淡水魚。アユモドキとは“鮎擬”,すなわち“アユに似て非なるもの”の意で,外形は一見アユに似るが,あぶらびれを欠くこと,口もとに6本のひげがあることなどでアユとは類縁関係の遠いことがわかる。日本特産で琵琶湖・淀川水系と岡山県下のいくつかの河川(吉井川,高梁(たかはし)川,旭川など)のみに分布。湖岸の浅所,川の中流域や灌漑用水路などにすみ,護岸の石垣などにひそむことが多い。全長10~15cm,体は左右に平たく,尾びれの後端が深く二叉(にさ)している点など,日本産の他のドジョウ科の魚とは著しく異なっている。体は黄褐色で体側に6~8本の幅広い暗褐色の横帯がある。餌は底にすむ小動物。産卵期は5~7月で岡山県下の河川ではおもに水田へ入って産卵するといわれる。蒲焼などにすると美味。分布が限られているうえに,河川改修や開発などにより分布地でもその数が著しく減って絶滅のおそれがあるため,国の天然記念物に指定されている。
執筆者:中村 守純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報