アラバル(英語表記)Arrabal, Fernando

デジタル大辞泉 「アラバル」の意味・読み・例文・類語

アラバル(Fernando Arrabal)

[1932~ ]スペイン劇作家小説家。のち、フランスに移住し、フランス語執筆自らの劇を「パニック演劇」と呼び、「迷路」「建築家とアッシリアの皇帝」「戴冠式」など、不条理演劇作品を残した。他に「二人の死刑執行人」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラバル」の意味・わかりやすい解説

アラバル
Arrabal, Fernando

[生]1932.8.11. スペイン領モロッコ,メリリャ
フランスの劇作家。3歳のときスペイン内乱が始り,父は逮捕されて死刑宣告を受け,のち行方不明。この頃に受けたショックが後年の劇作に大きな影を落している。マドリードで法律を学んだあと,1954年に渡仏。 59年に第1作『戦場ピクニック』 Piquenique en campagneが出版され,翌年初演。数年のうちに欧米諸国における前衛演劇旗手となった。アラバルの作風は,後年自身で「パニック劇」と呼んだように,純真な幼児の魂をもつ人間を取囲む残酷と倒錯に満ちた不条理の世界を,ユーモアサディズム夢想を織り交ぜて描くところに特色がある。代表作は『建築家とアッシリアの皇帝』 (1967) など。

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世界大百科事典 第2版 「アラバル」の意味・わかりやすい解説

アラバル【Fernando Arrabal】

1932‐
フランス語で書くスペインの劇作家。モロッコのスペイン領メリリャの生れ。スペイン内戦時共和主義者の父が,カトリック信者の母によりフランコ政権に密告されて行方不明となる悲劇的体験をもち,不条理の悪夢根底にした独自の世界を描く。1958年,短い戯曲集《戦場のピクニック》《ファンドとリス》などを刊行するが,上演は10年後を待たなければならなかった。65年以後は,アルトーやジュネの影響の下に〈パニック演劇〉を創立。

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世界大百科事典内のアラバルの言及

【前衛劇】より

…このような道化的嘲弄の世界は,初期のA.アダモフ作品や,J.ジュネの世界にも共通するものである。 60年代に入ると,前衛劇の第一線は交代し,フランスにおいては,F.ビエドゥー,R.デュビヤール,A.ガッティ,R.ワインガルテン,F.アラバルなどが輩出する。とくにスペイン領アフリカ生れのアラバルは,スペイン内戦の個人的体験と,カトリックの典礼のもつ神秘性を混交させた独自の世界を開拓し,J.ラベリ,V.ガルシア,J.サバリなど〈ネオ・バロック〉を名のる演出家たちの活動によって独自の地位を占めた。…

【フランス演劇】より

…しかし70年代からは〈キャフェ・テアートル(カフェ・テアトル)〉がそれにとってかわり,運動的様相は失われる。なお外国人演劇人との出会いとしては,60年代にF.アラバル作品の演出によりデビューする南米出身のトリオ,J.ラベリ(《建築家とアッシリア皇帝》),J.サバリ(《迷路》。のちには〈グラン・マジック・サーカス〉を組織),V.ガルシア(《自動車の墓場》。…

※「アラバル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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