精選版 日本国語大辞典 「アラビア語」の意味・読み・例文・類語
アラビア‐ご【アラビア語】
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セム語族(アフロ・アジア語族)南西分派に属する一大語群。4世紀以降約15世紀間にわたるきわめて多数の文献をもち、また今日では一億数千万人の使用者が数えられる。アラビア語は当初アラビア半島における地方語であったが、イスラム教の興隆とともに聖典コーランの用語として尊重され、イスラム教を支える言語として発展した。その過程で用法が多様化し、使用人口が増大し、今日では全世界にわたるイスラム教徒の主要用語となっている。
アラビア語は正則アラビア語(フスハー)と民間アラビア語(アンミーヤ)に大別される。「正則アラビア語」はコーランのアラビア語を規範としつつ、イスラム教の発展とともにつくりあげられた多少とも人工的な言語で、古典アラビア語文学の大半はこれで書かれている。きわめて複雑な文法体系をもち、イスラム諸学および外来諸学の高度の思想や科学的知識を表現することができた。また近代になると、新聞、雑誌、一般書籍の用語として用いられるとともに、ラジオ、テレビにおけるニュース、講演などにも用いられている。本来は文語であったが、口語的要素が取り入れられるようになっているため、今日では「標準アラビア語」ともよばれている。「民間アラビア語」はアラブ世界の各地で日常言語として用いられており、使用範囲の広い方言群とみなされる。大別してイラク方言、シリア方言、エジプト方言、北アフリカ方言とに分けられ、さらにこれらが細分されるが、ほかにも多数の方言群が認められる。民間アラビア語は、発音、語彙(ごい)および表現法、若干の文法の点で正則アラビア語と異なり、また方言群の間でかなりの相違がある。今日では遠隔地に住むアラブ間の交流が増大したために、共通民間アラビア語といえるものが形成されつつある。
[矢島文夫]
最古期アラビア語の文献としては、328年の日付をもつナマーラ刻文、512/513年の日付をもつザバド刻文、568年の日付をもつハッラーン刻文が知られているが、これらはアラム系ナバタイ文字で記されており、アラム語の影響を強く受けている。しかしイスラム以前のアラビア語刻文遺物はわずかしか知られていない。イスラム暦第1世紀(西暦7世紀)末に南イラクのクーファ地方で、クーフィー体とよばれるアラビア文字が使われるようになり、次の世紀に東方から紙の製法が伝えられるとともに、今日も用いられている筆写用の書体が生じた。一般的な書体はナスヒー体で、日常にはしばしばルクア体が使われ、ほかにも多くの書体が生じた。今日のアラビア語活字はこれらをもとにしてつくられている。他のセム諸文字と同じく、アラビア文字は主として子音のみを記し、母音およびその他の判別記号は必要に応じてのみつけ加えられる。またアラビア文字で記されるのは主として正則アラビア語であって、民間アラビア語は通常、表記されないが、最近は新聞、雑誌の会話体に使われ出している。
[矢島文夫]
正則アラビア語では28個の子音、8個の母音(u、a、i、u-、a-、i-、au、ai)が使われている。民間アラビア語では子音のいくつかに地方的変差が認められるほか、母音も複雑化していることが多い。
アラビア語の本来の単語の特徴は、3個か4個の語根(子音群)が基本的意味を決定し、母音および付加的要素がその単語の意味の細部を示すところにある。たとえば、d‐r‐sは「学ぶ」という意味をもち、darastuは「私は学んだ」、yadrusは「彼は学ぶ」、darsは「学ぶこと」「学課」、madrasaは「学ぶ場所」「学校」を表す。動詞には13の人称変化があり、また各種の派生変化形があるために、理論上は一つの語根から1000個以上の語形が生じうる。それらの派生語は新語として用いられることもあり、この造語力の豊かさが正則アラビア語をラテン語と並ぶ中世の一大文語にしたといわれる。
正則アラビア語の本来の語順は「述語+主語+補語」である(たとえば「彼は彼の学課を学んだ」はdarasa huwa darsa-hu「学んだ・彼・学課・彼の」)。しかし現代の標準アラビア語においては、語彙(ごい)とともに文法面でもヨーロッパ近代諸語の影響が増えており、この語順も厳格には守られなくなりつつある。
西暦8世紀後半以後のイスラム諸学の興隆とともに、きわめて多くの正則アラビア語文献が学者、文人によって生み出されたが、その一部門に文法学および辞典の作製があった。ハリールの『アインの書』、シーバワイヒの『キターブ』、イブン・マンズールの『アラブの言語』などが知られている。ヨーロッパでは中世スペイン、近世オランダでアラビア学が生じ、イギリス、フランス、ドイツが主流となって今日に及んでいる。
[矢島文夫]
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アラブ人の言語で,南セム語に属する。最古の文献はコーランで,その結果アラビア語はムスリムの共通語となり,現在イスラーム圏の,モロッコからイラクにわたる地域で使用される。
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…アラブがもともとアラビア半島に住んでいたかどうか,もしそうでないとすれば,彼らはどこから来たのかという問題は,現在なお未解決である(図)。彼らの言語アラビア語はセム系言語の一つで,古代南アラビア語およびエチオピア語からなる南セム語と,ヘブライ語,ウガリト語,アラム語からなる北西セム語との中間に位するという。現在アラビア語を母国語とする人々は,約1億5000万と推定される。…
…それは,主として啓示宗教であるイスラムの基本的性格に基づいている。アラビア語は単なる人と人との実用的な伝達手段であるばかりでなく,神と人との間のコミュニケーションの手段でもあった。つまりアラビア語とアラビア文字がもつ特殊な性格は,神の啓示がアラビア語で下され,しかも,それがアラビア文字でつづられたことから生まれたものである。…
…ニジェール・コルドファン語族の,ベヌエ・コンゴグループの下位グループである,バントゥー諸語に属する言語。この言語はアラビア語のṣāḥil〈海岸〉に由来する名称が示すように,オマーンやイエメンのアラブ商人たちが,東アフリカ海岸の商業根拠地で地元のバントゥー諸語を話す人々との接触の過程で,ピジン言語(交易上の混交言語)として成立,その後,スワヒリ語のみを話し,またそれを母語とする人々のグループが数を増して定着(クレオール)化し,版図をひろげていった。すでに15世紀ころには相当整った形のスワヒリ語が話されていたといわれる。…
…たとえば,ハカス語で,Min(私は)ib‐de(家‐から)pičik(手紙(を))al‐dy‐m(受けとった〈私が〉);Kičig(小さい)pala‐lar(子ども‐たち)となる。語彙(ごい)にはロシア語とアラビア語からの借用語が目だつ。前者は比較的新しいことで,トルコ共和国語にはロシア語からの借用語はない。…
…(4)語彙のきわめて多くの部分を外来語が占めている。従来からアラビア語がきわめて多く(たとえばTürk Cumhuriyeti〈トルコ共和国〉のCumhuriyetはアラビア語,Türkと‐iはトルコ語),ペルシア語もかなりあり,近代になってはフランス語が多く入っている(例:sinema〈映画〉,istasyon〈駅〉)。 トルコ語の歴史は,10~11世紀に小アジアへ移住したセルジューク族とオグズ族の言語(チュルク諸語の一つ)に始まり,14世紀以後のオスマン帝国時代の言語を経て,1923年,共和国の誕生とともにトルコ共和国語が確立した。…
…この政治的変動を契機に,ササン朝の公用語であり,当時の国教であったゾロアスター教の宗教用語であった中期ペルシア語(後に一般にパフラビー(パフラビー語)と呼ばれる)は,書かれた言語としての支持基盤を失った。新しい体制のもとで,イラン人が官職に就き,また学問・芸術の諸分野で活動するためには,アラビア語を習得する必要に迫られた。イスラム期の最高の哲学者,科学者の中に,イブン・シーナー(アビセンナ),ビールーニーをはじめとする多くのイラン人を数えることができるのもこのためである。…
…マルタ人の母語で,現在マルタ共和国では英語とともに公用語とされ,言語人口は約30万。マルタ語の形成に決定的な役割を果たしたのは,870年から220年間続いたイスラム教徒の支配で,その文法,語彙の根幹をなすのはアラビア語である。したがってマルタ語は系統的には南セム語に属し,アラビア語西部(=マグリブ)方言に最も近い。…
※「アラビア語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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