アルデヒド(英語表記)aldehyde

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デジタル大辞泉 「アルデヒド」の意味・読み・例文・類語

アルデヒド(aldehyde)

アルデヒド基-CHO をもつ化合物の総称。ホルムアルデヒドアセトアルデヒドなど。
-CHO で表される一価の基。酸化されてカルボキシル基-COOH になりやすい。

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精選版 日本国語大辞典 「アルデヒド」の意味・読み・例文・類語

アルデヒド

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] aldehyde [ドイツ語] Aldehyd )[ 異表記 ] アルデヒイド アルデヒド基をもつ化合物の総称。一般式 R-CHO 鎖式アルデヒドと芳香族アルデヒドとに分類され、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは前者に属する。特にアセトアルデヒドはアルデヒド樹脂原料として重要であるほか、還元剤、酢酸、香料、麻酔剤などに広く用いられる。〔薬品名彙(1873)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「アルデヒド」の意味・わかりやすい解説

アルデヒド
aldehyde

アルデヒド基(カルボニル基C=Oに水素原子が少なくとも1個結合した基)-CHOをもつ化合物の総称。一般式R-CHO。脱水素されたアルコールalcohol dehydrogenatedが語源とされる。IUPAC命名法では,相当するアルカンの語尾を〈nal(ナール)〉にかえて呼ぶ。たとえば,HCHOやCH3CHOはそれぞれメタナール,エタナールと呼ぶが,一般には相当するカルボン酸に由来する慣用名(この場合はホルムアルデヒド,アセトアルデヒド)で呼ばれる。代表的アルデヒドとしては表に示すようなものがあるが,このほか,テルペンにもシトロネラールシトラールなどのアルデヒドが知られている。天然には各種精油中に含まれているほか,グルコースなどの糖質化合物として存在する。アセトアルデヒドなどの低級脂肪族アルデヒドは,特有の刺激臭をもち,水溶性のものが多い。高級脂肪族および芳香族アルデヒドは水に難溶であり,芳香をもつものが多く,シトラール(レモンの香り),バニリン(バニラの香り),ケイ皮アルデヒド(ケイ皮油の成分)など,芳香をもつものが知られる。

アルデヒドはカルボニル基をもっているため,ケトンとよく似た性質を示すが,そのカルボニル基は他のカルボニル化合物と比べ最も反応性に富むために,アルデヒド特有の反応性も有している。たとえばフェーリング液(硫酸銅(Ⅱ),酒石酸ナトリウム,水酸化ナトリウムの水溶液)を還元して酸化銅(Ⅰ)を沈殿する。このような還元作用はアルデヒドが酸化されやすいことを示しており,アルデヒドは容易に酸化されてカルボン酸となる。たとえばベンズアルデヒドは空気中にさらすだけで安息香酸となる。一方,アルデヒドは還元されると第一アルコールとなる。

二酸化硫黄で脱色した塩基性染料フクシンの水溶液(シッフ試薬)を,アルデヒドに少量加えると紅紫色となる。このシッフ反応は鋭敏でアルデヒドの検出に用いられる。また,アルデヒドのカルボニル基にはさまざまな付加反応が起こる。たとえば,亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3と反応して結晶性のよい付加化合物R-CH(OH)SO3Naを生じる。この付加化合物は難溶性で,しかも弱酸性あるいは弱塩基性にすると容易に分解し,もとのアルデヒドを再生するので,アルデヒドの分離精製に利用される。シアン化水素もアルデヒドに付加してシアンヒドリンを生成する。これを加水分解すればα-ヒドロキシ酸が合成できる。

アンモニア,ヒドラジン,アミンとも付加反応するが,付加生成物は一般に不安定で複雑な反応が起こる。セミカルバジドH2NNHCONH2とはセミカルバゾンRCH=NNHCONH2を,ヒドロキシルアミンH2NOHとはアルドキシムRCH=NOHをつくる。グリニャール試薬,アルキルリチウムなどの有機金属試薬も付加し,加水分解すると第二アルコールが得られる。

アルコールとの付加化合物RCH(OH)OR′はクロラールのようなもの以外は不安定であるが,酸触媒のもとでは脱水縮合してアセタールを生じる。

ただし分子内の適当な位置に水酸基を有するアルデヒドでは,水酸基がアルデヒド基に分子内で付加したヘミアセタールとして安定に存在する。ほとんどの単糖類(アルドース)はこの型で存在する。

 一方,カルボニル基,ニトリル基,ニトロ基,エステル基などに隣接するメチレン基,メチル基は活性で,このような活性メチレン化合物は酸,塩基触媒の作用でアルデヒドと縮合する。この反応は応用範囲が広く,合成化学上きわめて重要である。

 R-CHO+CH2(COOC2H52─→R-CH=C(COOC2H52+H2O

脂肪族アルデヒドのカルボニル基に隣接するメチル基,メチレン基も同様に反応性に富み,たとえばアセトアルデヒドは希アルカリの作用により2分子間でアルドール縮合し,アルドール,クロトンアルデヒドを生成する。

 さらに芳香族アルデヒドに特有の反応として,カニッツァーロ反応ベンゾイン縮合なども起こす。

アルデヒドの一般的製法は,対応する第一アルコールをクロム酸などで酸化する方法である。さらに酸塩化物の還元,ギ酸エステルによるホルミル化反応,アセチレンの水和反応など多くの合成法も知られている。工業的にはアルケンオレフィン系炭化水素)の触媒酸化反応によって製造される。
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化学辞典 第2版 「アルデヒド」の解説

アルデヒド
アルデヒド
aldehyde

アルデヒド基-CHOをもつ化合物の総称.一般式は次の構造式で表される.ここに,RはH原子(ホルムアルデヒド)または炭化水素基である.アルデヒドは第一級アルコールの酸化されたものである.また,アルデヒドは酸化されてカルボン酸になりやすい.

アルデヒドは,水溶液中ではオルトアルデヒドと平衡にあると考えられている.

アルデヒドの製法としては,
(1)第一級アルコールの酸化,
(2)酸塩化物または酸無水物の還元(とくにローゼンムント還元),
(3)オルトギ酸エステルグリニャール反応

(4)化合物RCHX2の加水分解,

RCHX2 + H2O → RCHO + 2HX,

(5)アルケンのオゾン分解,
(6)グリコールの四酢酸鉛による酸化,
(7)芳香族アルデヒドはベンゼンのような芳香族炭化水素に塩化アルミニウムの存在下でシアン化水素と塩化水素とを作用させ,生じるイミン(たとえばC6H5-CH=NH)を希酸で加水分解する,
(8)芳香族炭化水素(ベンゼン自身には適用できない)に塩化アルミニウムおよび塩化銅(Ⅰ)の存在下で一酸化炭素と塩化水素の混合物を作用させる(ガッターマン反応),
などがある.低級アルデヒドは水溶性の気体か液体であり,C6~C9 のアルデヒドは香料として使われる.また,高級アルデヒドは固体で水に不溶.還元作用をもち,アンモニア性硝酸銀溶液から銀を沈殿し,フェーリング液を還元して酸化銅(Ⅰ)を沈殿する.シッフ試薬と反応すると赤色を呈する.五塩化リンによりアルデヒド基の酸素原子は2原子の塩素と入れかわる.アルデヒド基のC=O二重結合に対して亜硫酸水素ナトリウム,シアン化水素,グリニャール試薬などが求核付加反応をする.また,フェニルヒドラジンヒドロキシルアミンなど,カルボニル試薬によりC=Oの酸素原子が置換され,結晶性の誘導体をつくり,アルデヒドの確認に利用される.また,RCH2CHO,RR′CHCHOの型のアルデヒドは,希アルカリによりアルドール縮合をするが,そのほかのアルデヒド,とくに芳香族アルデヒドは,濃アルカリによりカニッツァーロ反応を起こす.

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百科事典マイペディア 「アルデヒド」の意味・わかりやすい解説

アルデヒド

アルデヒド基−CHOをもつ有機化合物の総称。ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,ベンズアルデヒド,アクロレイン,フルフラールなどがその例。還元性を有し銀鏡反応を示したり,フェーリング液を還元し,酸化するとカルボン酸になり,還元するとアルコールになる。その他各種付加反応や縮合を行う。炭素数が6〜9のアルデヒドは芳香をもち,香料の原料となる。
→関連項目アンタブス

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栄養・生化学辞典 「アルデヒド」の解説

アルデヒド

 ホルミル基(-CHO)をもつ化合物の総称で,還元性を示す.

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