アレゴリー(英語表記)allegory

精選版 日本国語大辞典 「アレゴリー」の意味・読み・例文・類語

アレゴリー

〘名〙 (allegory)⸨アルレゴリー⸩ 抽象的な意味をもつ事柄を、具体的な形式を用いて表現すること。また、そのような文学。諷喩(ふうゆ)寓意(ぐうい)。寓意物語。
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「亜(ア)ルレゴリイとはいかなるものぞ。曰く、仮作物語(つくりものがたり)一種にして」

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デジタル大辞泉 「アレゴリー」の意味・読み・例文・類語

アレゴリー(allegory)

寓意ぐうい諷喩ふうゆ。また、たとえ話。寓意物語。
[類語]比喩たとえ形容擬人象徴比況縮図たとえば直喩明喩隠喩暗喩諷喩寓喩提喩換喩・声喩・メタファー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー
allegory

寓意。語源ギリシア語 allos (他) +agoreuein (話す) 。シンボルやイメージを用いて表面的意味より深い意味を伝えようとするもので,拡大された隠喩といえる。たとえ話 parable寓話 fableより複雑で長く,ある物語の展開が同時に別の事件や思想を組立て,両者の間に明瞭で継続的な関連が認められる場合をいう。その基本的手法は擬人法であり,人物が抽象的観念を表わす。 13~14世紀に多くの例がみられ,世俗的な『薔薇物語』や宗教的な『農夫ピアズの幻』などを代表とするが,道徳劇エブリマン』,ダンテ叙事詩神曲』,スペンサーロマンス神仙女王』,バニヤンの小説『天路歴程』など各種の分野に広く見出される。アレゴリーには2つの型がある。1つは歴史的政治的なもので,物語に出てくる以外の人物や事件に意味の重点がおかれるもの。他方は倫理的宗教的なもので,物語中の人物や事件に一連の思想的内容が付加されているもの。単純なアレゴリーの場合,物語は完全に教訓に従属するが,複雑な倫理的アレゴリーは崇高な調子をもち,物語によって楽しませながら教化の目的を果す。政治的歴史的アレゴリーは皮肉な調子をもつ傾向があり,風刺と密接に結びつくことが多い (たとえばドライデンの『アブサロムとアキトフェル』) 。アレゴリー解釈は文学批評における特殊な方法論を生み出している。

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百科事典マイペディア 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー

寓意(ぐうい)。ある概念を他の具象的な事柄によって表現すること。(1)文学の場合は,譬(たとえ)話が肉付けされ物語の要素が表面に出されたもの。《薔薇物語》,バニヤンの《天路歴程》など。動物によって道徳的教訓を述べた短い物語は寓話と呼ばれる。(2)造形美術においては,抽象的な概念を,女性の姿などによって視覚化することをいう。その補助手段として用いられる道具をアトリビュートattribute(属性,持物)と呼ぶ。
→関連項目岡本太郎比喩

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー
あれごりー
allegory

寓喩(ぐうゆ)、寓意物語。ギリシア語のアレーゴリアallegoria(別な話し方)に由来し、抽象的な概念をそのまま表現せずに、別の具体的なイメージを用いて表現する文学形式。メタフォーmetaphor(隠喩)を拡大、発展させたものともいえる。パラブルparable(たとえ話)やフェイブルfable(寓話)よりも複雑で長く、構想力に富み、しばしば擬人化がみられる。聖書やダンテの『神曲』はいくつかの異なったアレゴリー、つまり重層的な寓喩として解釈される。代表的作品としては、中世の道徳劇や『バラ物語』、近世のE・スペンサーの『妖精(ようせい)女王』やバニヤンの『天路歴程』、20世紀ではG・オーウェルの『動物農場』がある。

[船戸英夫]

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世界大百科事典 第2版 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー【allegory】

語源はギリシア語のallēgoria(allos〈他〉+agoreuein〈話すこと〉)。すなわち,ある事物を,直接的に表現するのではなく,他の事物によって暗示的に表現する方法の意であるが,この表現方法によって創作された文学作品あるいは造形芸術作品を一般にアレゴリーと称する。寓意,寓喩,風喩ともいう。
【文学】
 アレゴリーの発想ないし方法の起源はきわめて古く,ギリシア・ローマ神話も聖書も,その多くの部分をアレゴリーとして解釈することが可能である。

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世界大百科事典内のアレゴリーの言及

【比喩】より

…たとえば〈人はパンのみによって生きるのではない〉というような表現において,〈パン〉という種は食物という類全体をあらわす提喩である。(5)諷喩allegory(アレゴリー) 同系列の隠喩を連続させて,たとえ話のような形式に構成する比喩表現。たとえば,人生を〈旅〉に見立てる隠喩を展開させれば〈日が暮れかけてまだ旅の道は遠い〉というような,人生を語る諷喩が成立する。…

【小説】より

…この考え方だと短編小説,観念小説,怪奇小説,ファンタジーSFヌーボー・ロマンやポストモダニズムなどと呼ばれる最近の前衛的小説などが入らなくなるが,これらの小説も標準的小説の多くの特徴を取りいれており,また伝統的小説に反逆して書かれた前衛的小説にしても,この標準的小説概念を前提として含んでいるといえる。 この標準的な小説に対立するものとして,一方にロマンス,他方にアレゴリーないし寓意物語がある。ロマンスはもともと中世フランスの騎士道物語の名で,現代ヨーロッパ諸語で小説を〈ロマンroman〉と呼ぶもととなっているが,ここでのロマンスはそうした特定の歴史的形態を離れて,広く冒険,不思議,理想化された人物など,空想を自由にはばたかせた物語をいう。…

【比喩】より

…たとえば〈人はパンのみによって生きるのではない〉というような表現において,〈パン〉という種は食物という類全体をあらわす提喩である。(5)諷喩allegory(アレゴリー) 同系列の隠喩を連続させて,たとえ話のような形式に構成する比喩表現。たとえば,人生を〈旅〉に見立てる隠喩を展開させれば〈日が暮れかけてまだ旅の道は遠い〉というような,人生を語る諷喩が成立する。…

※「アレゴリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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