サトイモ科のクワズイモ属Alocasiaの多年草で,熱帯アジアに約70種がある。茎は多くは短いが,多肉状で太い。葉は心臓形ないし矢じり形で,模様の美しい種類があり,温室観葉植物として栽植され,20℃以上の高温多湿を好むので,多くは植物園などの温室で栽培される。サトイモに似るがイモを食べないのでクワズイモの名がついたが,もとは食用にしたらしい。クワズイモA.odora Kochは強健で,葉は緑色の卵形で,長さ50~80cmになる。株は群生し,茎がたちあがり,人の背丈より高く育つ。インド東部から中国南部,日本の暖地に分布する。シマクワズイモA.cucullata Schott(英名Chinese taro)は葉が円心形で,南西諸島からインド東部に分布する。インドクワズイモA.macrorrhiza Schott(英名(giant)taro)は,東南アジアから太平洋諸島に広く分布し,ポリネシアの一部では食用として栽培される。その園芸品種に乳白色の斑(ふ)が入るcv.Variegataもある。
観葉植物として栽植される種は,ほかに数種ある。キッコウダコA.cuprea Kochの葉は楕円形で,光沢ある緑褐色で,脈間が盛り上がり,脈の部分は白斑状になり,美しい。同様な白斑を有する種にナガバクワズイモA.lowii Hook.f.やコウライダコA.sanderiana Bull.があり,またこの両種の雑種とされる。アロカシア・アマゾニカA.×amazonica Hort.は長矢じり形,波状縁で,葉脈に沿って銀白色斑となる葉を有し美しい。温室での栽培の場合,冬の低温期は乾燥休眠させる。実生もできるが,普通は5~6月に茎を5~6cmの長さに切って挿木する。ミズゴケ植えが管理しやすい。半日陰で多肥培養するとよい。
執筆者:高林 成年
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の観葉植物。熱帯アジアに分布する。食用とされるものもあるが、クワズイモは全体にシュウ酸カルシウムを含んでいて、食すると中毒症状をおこすことがあり、食用にはならない。サトイモの葉に似た長い葉柄をもつ心臓形の葉が株元から広がり、新しい葉が出るごとにわずかずつ伸びる。葉の形と金属的な色彩および光沢の美しいもの十数種が観賞用に栽培される。代表的なものは、濃緑色の葉に切れ込みが入り葉脈が銀白色のサンデリアーナ、切れ込みの浅いアマゾニカ、葉が赤銅色、卵状形で表面が波状のキュープレア、また葉が青緑色で葉脈のみ銀白色のローウィー、プツェイシイもよく栽培される。性質は弱く、冬は湿度を高くし、温度は18℃以上に保つ。繁殖は、短い茎から取木をするが、種類によっては株分けも可能である。
[坂梨一郎 2022年1月21日]
ポリネシアの一部では、アロカシアをすりつぶして水にさらし、竹筒で石蒸ししたものを一晩放置し、さらに再度石蒸しするという調理法により多量のシュウ酸を抜き、食用にする。またタヒチのアペ(ape) A. macrorrhizos Schottは弱毒性なので、作物として栽培されている。このほか、所によってはインディカA. indica (Roxb.) Schottも栽培され、インドではククルラータA. cucullataやオドラA. odora (Roxb.) K.Kochも食用にされる。
マレー半島の先住民イリタントは、他部族との戦いの際、デヌダータA. denudata Engl.を毒矢に用いた。
[湯浅浩史 2022年1月21日]
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