翻訳|anthocyan
花青素ともいう。植物の花弁や果皮などの美しい色の原因となっている一群の色素の総称。ときには葉や茎(赤ジソ,赤キャベツ)あるいは根(ハツカダイコン)にも存在する。マーカートL.C.Marquartがヤグルマギクの花の青い色素をギリシア語の花anthosと青いkyanosを表す言葉からアントシアンと名付けたのに始まる(1835)。この一群の色素はほとんどすべて配糖体として存在し,色素の本体であるアグリコン部分はアントシアニジンanthocyanidin,その配糖体をアントシアニンanthocyanin,また両者をとくに区別しないときにアントシアンと呼んでいる。その構造の決定はドイツの化学者ウィルシュテッターR.Willstätterの研究に負うところが大きくヤグルマギクからシアニンcyanin,さらにペラルゴンpelargon,デルフィニンdelphininが分離された。さまざまのアントシアンのアグリコン(アントシアニジン)はすべて2-フェニルベンゾピリリウムの構造をもち,ペラルゴニジン,シアニジン,デルフィニジンの3種およびそのメチルエーテル誘導体である。糖は3位または5位の水酸基に結合し,グルコース,ガラクトース,ラムノースなどが知られている。また有機酸(p-オキシ安息香酸,マロン酸,p-クマル酸など)が結合している場合もある。
アントシアンは水溶性であり,アンモニア蒸気をあてると青ないし緑色に変化し,逆に酸を加えるとすべて鮮やかな赤色となる。これらの点で赤色系の色素であるカロチノイドと容易に区別される。中性からアルカリ側ではひじょうに不安定で,酸性域で安定で,とくに塩化水素によるオキソニウム塩は結晶しやすく,その構造がよく解析されている。
アントシアニンの数は花の色に比べてそれほど多様ではなく,また同一のアントシアニンでも花の色は必ずしも同一ではない。この原因は金属塩類による錯塩にもとづく場合と補助色素の存在による場合が知られている。
執筆者:大隅 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
花や果実の色,紅葉した葉の色などの原因となる色素の総称.語源的には,花の青色色素(anthos花+cyanos青)を意味し,古くは花青葉と和訳されていた.ヤグルマギクの青色色素を最初に手がけたL. Marguart(1935年)の造語である.後年,R. Willstatter(ウィルシュテッター)一門の研究により,配糖体とアグリコンの区別を明らかにすることが必要になったので,アントシアンを総称名とし,アントシアニンを配糖体,アントシアニジンをアグリコンとすることがほぼ定着している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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