改訂新版 世界大百科事典 「イイギリ」の意味・わかりやすい解説
イイギリ
Idesia polycarpa Maxim.
日本の山野に自生するイイギリ科の落葉高木で高さ10~15m,直径1mになる。秋に紅熟した果実が多数,枝端からぶら下がる様子は美しい。樹皮は灰白色で平滑。葉は互生し,広卵形から卵状心形,基部は通常は心形,大きくて長さ8~20cm,ふちにまばらな鋸歯があり,放射状に5主脈または7主脈があり,葉の裏は灰白色で脈腋(みやくえき)に毛束がある。葉柄は長さ葉身とほぼ同長で,上端に2個の蜜腺がある。雌雄異株で,長さ10~20cmの円錐花序は枝端に生じ垂下する。花は5月に咲き黄緑色,径約1cm。萼片は5個。雄花には多数のおしべがあり,雌花には多数の退化雄蕊(ゆうずい)がある。果実は球形の液果で,径約9mm,なかに多数の小さい種子がある。暖温帯,日本(本州~琉球諸島),台湾,中国の中・西部に分布する。材は軽く,げた材,箱材にし,また実が美しいので庭木,街路樹にする。
イイギリ科Flacourtiaceaeは約85属500種からなり,主として熱帯に分布し,果樹,薬用として重要なものがある。昔,この葉で飯をつつんだので飯桐(いいぎり)の名がついたという。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報