イギリス海峡(読み)イギリスかいきょう(英語表記)English Channel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イギリス海峡」の意味・わかりやすい解説

イギリス海峡
イギリスかいきょう
English Channel

イギリスグレートブリテン島フランスを隔てる海峡東端ドーバー海峡を経て北海につながっている。フランスではラマンシュ La Manche,古称はオケアヌスブリタニクス Oceanus Britannicusイングランド南西端とフランス最西端を結ぶ線から東へ,ドーバー海峡まで東西約 560kmにわたって広がる海域をさし,幅は最狭部のドーバー海峡で 30~40km,西部の最も広いところで約 180km。大陸棚に位置するため,水深は全体に浅く,西部にある最深部で 172m,最も浅いドーバー海峡では 35~55m。氷河期には一部陸化し,大陸とグレートブリテン島を連絡した。海峡内にはフランス北部ノルマンディーコタンタン半島西岸沖にチャネル諸島,イングランドのハンプシャー県沖にワイト島がある。海峡に注ぐフランスのセーヌ川ソンム川,イギリスのエクス川,テーマー川などの小河川の河口には三角江(エスチュアリー)が発達している。沿岸主要港はイギリスのプリマスサウサンプトンニューヘーブンフォークストンドーバー,フランスのシェルブールルアーブルディエップブーローニュシュルメールカレーなどで,これらはフェリーボートホバークラフト(→エアクッション艇)などにより連絡している。沿岸にはイギリスのブライトンをはじめとする海浜保養地が多い。
海峡横断についての人々の関心は強く,古くは 1785年に気球で海峡を越えた記録がある。1875年にはイギリス人マシュー・ウェッブがドーバーとフランスのグリネ岬の間を泳いで横断,以後両国側から横断水泳が盛んに行なわれるようになり,記録認定の協会も設立された。飛行機による横断は 1909年が最初。1994年,ドーバー海峡の海底を貫き,イギリスのフォークストンとフランスのカレーを結ぶユーロトンネルが開通した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イギリス海峡」の意味・わかりやすい解説

イギリス海峡
いぎりすかいきょう
English Channel

イギリス南部とフランス北部を隔てる東西200キロメートルの浅い海峡で、フランスではラ・マンシュLa Mancheとよばれる。もっとも幅の狭い所は東口のドーバー海峡で、34キロメートルにすぎない。平均深度55メートル、最深部はチャネル諸島北方の172メートルである。最終氷期後の海進によってこの海峡が生じ、イギリスは大陸から分離した。冷・温両水域の境界にあたるので、両水域の漁獲タラヒラメサバイワシカキなど)があるが、ニシン漁は衰退した。沿岸には、プリマス、ダートマス(イギリス側)や、ル・アーブル、サン・マロ(フランス側)など、多くの漁港がある。イギリスのワイト島やチャネル諸島(1066年よりイギリス領)は、イギリスでもっとも温暖な観光地である。

 海峡周辺は世界でもっとも潮差の大きい海域で、フランスのランス川河口入り江には1966年に完成した世界最初の潮汐発電所がある。また、19世紀初めから、ドーバー海峡を横断する海底トンネル計画があったが構想や簡単な調査にとどまっていた。その後、イギリス、フランス両国が共同で調査、提案を繰り返し、1981年9月の両国首脳会談で改めて計画の推進が合意され、1987年着工、1994年英仏海峡トンネルとして開業された。

[小池一之]

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百科事典マイペディア 「イギリス海峡」の意味・わかりやすい解説

イギリス海峡【イギリスかいきょう】

グレート・ブリテン島南西海岸とフランス北西部の間の海峡。フランス語ではラ・マンシュ。東方で幅をせばめドーバー海峡となって北海に通じる。最深172m。フランス海岸近くに英領チャネル諸島がある。

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世界大百科事典 第2版 「イギリス海峡」の意味・わかりやすい解説

イギリスかいきょう【イギリス海峡 English Channel】

イギリス南岸とフランス北岸との間の海峡。ザ・チャンネルthe Channelとも呼ぶ。幅が西の大西洋側で約180km,東のドーバー海峡側で約34kmと徐々に狭くなるため,フランスではラ・マンシュla Manche(袖の意)という。古代には〈ブリタニアの海Oceanus Britannicus〉と呼ばれた。第三紀からの向斜運動で形成されたが,大陸棚にあるため,最深部172m,平均水深54mの浅海である。

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