イワムシ(読み)いわむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワムシ」の意味・わかりやすい解説

イワムシ
いわむし / 岩虫
[学] Marphysa sanguinea

環形動物門多毛綱遊在目イソメ科に属する海産動物。日本各地の浅海に広く分布する。岩のすきまに潜っているものが多いのでこの名がついたのであろうが、砂泥中にもすむ。環境によって体色など多少体質が異なる。各地で釣り餌(え)として用いられているので、地方によってアカムシイワイソメエムシホンムシイソベドロムシなどとよばれ、20以上の別名がある。体長30~50センチメートルで赤褐色前部は丸いが後部に向かうほど背腹に扁平(へんぺい)になる。第30節付近から体の両側えらが生じ、初めは1本であるが、それに4~5本の糸状の鰓糸(さいし)が増えて、櫛(くし)の歯のようになる。マダイマコガレイスズキベラアナゴキス、イサキ釣りなどの好餌料(こうじりょう)となる。近年は、台湾、フィリピン、韓国などから釣り餌用として生きた虫や塩漬けにしたものが輸入されている。

[今島 実]


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世界大百科事典 第2版 「イワムシ」の意味・わかりやすい解説

イワムシ【Marphysa sanguinea】

多毛綱イソメ科の環形動物(イラスト)。アカムシ,エムシ,イソベ,ドロムシ,セムシ,ホンムシ,イワイソメ,ヒラムシなど20ほどの別名がある。日本各地に分布し,潮間帯の岩の隙間にすむところからこの名がつけられたが,干潟のような砂泥中にすむものもある。体長20~50cm,体節数350内外。体の前部は円筒状であるが,その後方は背腹に扁平になる。頭部は中央前縁がややくぼみ,5本の感触手がある。体節の両側からいぼ足が生ずるが,第30体節付近のいぼ足から1本のえらが現れ,漸次増えて4~5本の鰓糸(さいし)が櫛歯(くしば)状に並ぶ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワムシ」の意味・わかりやすい解説

イワムシ
Marphysa sanguinea

環形動物門多毛綱遊在目イソメ科。体長 30~50cm,体節数 350内外。体前半部は丸いが,後半部は扁平になり,第 30体節付近から疣足 (いぼあし) の上に4~5本の糸状の鰓糸が生じる。岩のすきまにもぐってすんでいるが,砂泥の中にもすみ,すむ場所によって体色が多少異なる。タイ,マコガレイ,スズキ,キス,イサキ釣などの釣餌として用いられ,アカムシ,ホンムシ,イワイソメなどの別名でも呼ばれている。日本各地の海岸に分布する。

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百科事典マイペディア 「イワムシ」の意味・わかりやすい解説

イワムシ

イワメ,アカムシ,エムシ,ホンムシ,ドロムシなどともいう。多毛綱イソメ科の環形動物。体長20〜50cmで赤褐色。前部は円筒形で,後半は平ら。日本各地の海岸の岩のすきまや泥の中にすむ。タイ,カレイ,スズキなど多くの魚の釣餌(つりえ)に用いられる。
→関連項目イソメ

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世界大百科事典内のイワムシの言及

【イソゴカイ】より

…多毛綱ゴカイ科の環形動物。ジャリメ,スナイソメ,イワムシ,マムシなど全国で約20ほどの別名で呼ばれている。本州中部以南に分布し,潮間帯の砂れき中にすむ。…

【イソメ】より

…多毛綱イソメ科Eunicidaeに属する環形動物の総称。日本ではイワムシ,オニイソメなど19種が知られている。体長は5~30cmのものが大部分であるが,オニイソメでは体長が1mを超すものもいる。…

【多毛類】より

…環形動物門の1綱で,環形動物中,もっとも種類が多い。いわゆるゴカイ(イラスト),エラコイワムシなどの仲間である。ほとんどが海産で,ごく少数のものが淡水にもすんでいる。…

※「イワムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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