インフルエンザ菌(読み)いんふるえんざきん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インフルエンザ菌」の意味・わかりやすい解説

インフルエンザ菌
いんふるえんざきん

グラム陰性の小桿菌(かんきん)Hemophilus influenzaeで、1892年ドイツの細菌学者パイフェルRichard Friedrich Johannes Pfeiffer(1858―1945)がインフルエンザの患者から分離し、その病原菌として記載したのでこの名でよばれたが、その後インフルエンザの病原インフルエンザウイルスであることが確定し、この菌はインフルエンザとは無関係であることが明らかになった。インフルエンザウイルスなどの感染に引き続いて二次的呼吸器感染症(肺炎)などをおこすことがある。肺炎の5~15%がインフルエンザ菌によるものとの報告がある。インフルエンザ菌は乳幼児の感染症(敗血症髄膜炎、肺炎、結膜炎中耳炎など)の病原として重要な細菌であるが、健康人の咽頭(いんとう)からも検出される。インフルエンザ菌による感染症の治療にはアンピシリンテトラサイクリンなどの抗生物質が使われる。接触または飛沫(ひまつ)感染するが、生後1か月から6歳ぐらいまでの乳幼児が感染しやすい。インフルエンザ菌は血清学的にa、b、c、d、e、fに分けられるが、乳幼児の感染は大部分がb型で、3歳以上になると他の血清型の感染がみられる。培養には、血液を寒天に加えて加熱し、血球を壊して発育阻害因子を除いたチョコレート寒天培地が使われる。培養では、フィラメント状や球菌状となり多形性を示す。

[柳下徳雄・曽根田正己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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