日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウェブスター(Daniel Webster)
うぇぶすたー
Daniel Webster
(1782―1852)
アメリカの政治家。1月18日ニュー・ハンプシャー生まれ。連邦下院議員、上院議員、国務長官の要職を歴任し、南北対立の緊張が深まるなかにあって、南部の理論に対抗して北東部の雄弁な代弁者の役割を務め、また、連邦の統一を主張した。ニュー・イングランドを中心とした製造業の発展とともに、保護関税論に転じ、1828年の関税法に対する南部の反対とその後の「無効宣言」論争のなかで、これに対抗する論陣を張り、30年のR・V・ヘーンとの論争のなかで、連邦の統一と一体性を強く主張した。しかし、第二合衆国銀行の特許更新問題や財政政策をめぐってジャクソン大統領との対立を深め、やがてホイッグ党の結成にあたって指導的役割を果たした。42年にタイラー治下の国務長官としてウェブスター‐アシュバートン条約を締結し、アメリカ・カナダ国境を画定した。「一八五〇年の妥協」を連邦分裂の回避という点から支持し、反奴隷制派の反発を招くところとなった。52年10月24日没。
[中谷義和]