改訂新版 世界大百科事典 「ウズラ」の意味・わかりやすい解説
ウズラ (鶉)
common quail
Coturnix coturnix
キジ目キジ科の鳥。全長約18cm。ヨーロッパからアジアにかけて,また北アフリカとアフリカ南東部で繁殖し,高緯度地方のものはキジ科の鳥としてはめずらしくかなり長距離の渡りをする。日本ではおもに本州中部以北の草原で繁殖し,冬季は関東から九州にかけての平地に移動する。体型は丸みを帯び,尾は短い。羽色は褐色で,白色,黒色,暗褐色の斑紋や縞模様がある。耕地,牧場,草原などで生活し,林の中では見られない。地上にすみ,おもに植物の種子や穀物などを食べるが,昆虫などの小動物もかなり食べている。繁殖期には雄がなわばりをもち,盛んにグワックルルル(アッジャパーとも聞こえる)と鳴いてなわばりを防衛し,雌を招き入れる。交尾後,雌は地面のくぼみに草を敷いて粗雑な巣をつくり,約10卵を産み,18日間抱卵する。雛は孵化(ふか)後数時間で親鳥とともに巣を離れ,その後約20日間で飛べるようになる。
肉,卵がおいしいため食用として,野外に放して狩猟をするために,また近年は世代交代が早いのを利用して実験動物として,古くは鳴声の変異個体を飼育し,その鳴きを楽しむ“鳴きウズラ”として,古くから飼育されてきた。現在では採卵,食肉のためのウズラの飼育は卵を孵卵(ふらん)器によってかえし,狭い籠の中に多数を詰め込み,その籠を何段にも重ねて,人工光線を24時間照明する方法で効率よく行われている。
執筆者:柿沢 亮三 ウズラは古くは〈うずらどり〉と呼ばれ,その肉が美味なため狩猟の対象とされた。江戸時代には愛玩用として,上に網を張り,下に砂を敷いた鶉籠に入れたり,〈きんちゃく鶉〉といって腰に下げるきんちゃくの中に入れたりして飼育した。ウズラの微妙な鳴声を楽しもうとした人々は,この鳥がもっともよく鳴く早朝から〈鶉合(うずらあわせ)〉を催し,各自が飼い慣らした鳥の鳴声の優劣を競った。この鳴声と,茂みの中にそそくさと隠れる挙動を題材とした昔話に,借金取りのヒバリからウズラが逃げまわる〈雲雀と借金〉がある。ウズラの羽は赤褐色でじみだが,黒色と黄白色の斑紋が特徴的なため,人々に注目された。そこで,ウズラの斑紋とよく似た模様のある品物は,鶉豆,鶉茸(マツタケの上等品種)などと,鶉の名を冠して呼ばれた。
執筆者:佐々木 清光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報