ウトウ(読み)うとう(英語表記)hornbilled puffin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウトウ」の意味・わかりやすい解説

ウトウ
Cerorhinca monocerata; rhinoceros auklet

チドリ目ウミスズメ科。全長約 38cmの海鳥頭上,背,,尾は暗褐色で,顔,喉,胸,脇腹が灰褐色,腹は白い。橙色。趾(あしゆび)には蹼(みずかき)がある。雌雄とも繁殖期には上嘴の基部上に三角形の突起があるほか,眼と嘴の後方に伸びる 2条の白色の飾り羽がある。冬羽(→羽衣)のときには嘴の突起と飾り羽はない。冬季には沖合いでも沿岸海域でも暮らすが,繁殖期には海岸の崖地や沿岸の島の草地斜面などに 1~5mの深い穴を掘り,集団で営巣する。北太平洋の海上に生息し,潜水してイカナゴオキアミ,イカなどをとる。水深 60mまでもぐったという記録がある。日本では北海道天売島,大黒島,松前小島岩手県椿島宮城県の江ノ島列島などで繁殖している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウトウ」の意味・わかりやすい解説

ウトウ
うとう / 善知鳥
hornbilled puffin
rhinoceros auklet
[学] Cerorhinca monocerata

鳥綱チドリ目ウミスズメ科の海鳥。全長37.5センチメートル。頭から尾までの背面は黒褐色、腹は白色。夏羽では顔に2条の飾り羽がある。嘴(くちばし)は橙(だいだい)色で、夏羽では基部に上方に向いた突起がある。雌雄同色。太平洋の寒帯沿岸にすんでおり、カリフォルニアから日本まで分布している。日本では本州北部や北海道の離島で繁殖するものがあり、宮城県女川(おながわ)湾沖の江の島、北海道の天売(てうり)島などはよく知られた集団繁殖地である。地中に1メートルほどの横穴を掘り、枯れ草を敷き、汚白(おはく)色地に淡褐色や灰青色の斑(はん)や条斑のある1卵を産む。北海道ではケントガモともよばれる。「うとう」とはアイヌ語で「突起」の意で、東北地方では海岸に突出した場所をいい、嘴の形が似ているのでこうよばれる。青森市には善知鳥神社があるが、「陸奥(みちのく)の外(そと)の浜なる呼子鳥鳴くなる声はうたふやすかた」と詠んだ藤原定家(ていか)の歌があるように、陸奥(むつ)外ヶ浜にまつわる伝説にちなんでいる。

[柳澤紀夫]

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