日本大百科全書(ニッポニカ) 「オウム」の意味・わかりやすい解説
オウム
おうむ / 鸚鵡
parrot
cockatoo
鳥綱オウム目オウム科の鳥。オウム目はオウム類やインコ類を含み、総称して英名をparrotといい、約335種があり、世界の熱帯地方と南半球の温帯地方に広く分布し、南太平洋の諸島にも特産種がすむ。代表的オウム類(バタン類を含むオウム属Cacatua)はスラウェシ(セレベス)島、モルッカ諸島、オーストラリア、ニューギニア島、ソロモン諸島、フィリピンなどに分布し、白色大形(ピンクの種もある)で、頭上に扇状に立つ羽冠(白色、黄色、ピンクなど。羽冠の小さいものもある)がある。嘴(くちばし)は大きく黒色か黄白色、足は黒色。
[黒田長久]
生態
森林の林縁から開けた土地に群れで生活し、樹果、果実、種子、芽、花、根、穀類のほか、昆虫も食べるものがある。声は大きく、やかましく鳴きあい、社交性が強く、ねぐらも集団でとる。巣は高い樹洞を利用し、多少の葉を敷き、白色の2~4卵を産み、雌雄交代で抱卵し、約4週間で孵化(ふか)する。雛(ひな)は6~8週間で巣立つ。
[黒田長久]
種類
コバタンC. sulphureaは全長35センチメートル内外で小形、白色で嘴は黒色。羽冠の先は反りあがる。羽冠、耳部、翼、尾の裏などに黄色を帯びる。セレベス島、小スンダ列島、チモール島の産。キバタンC. galeritaは全長40~50センチメートル、羽冠は前種に似る。オーストラリアでは大きな声に由来するwhite cockatooの名でよばれ、大群で穀類を食害するほど多い。古来もっとも多く飼われ、長命を保ち、人語も覚える。オーストラリアからパプア・ニューギニアまで分布する(眼囲の青いアオメキバタンは本種の亜種)。オオバタンC. moluccensisは全長50センチメートル、羽冠は円く先は赤鮭(さけ)色、体下面は鮭色。モルッカ諸島産で、個体により人語を巧みにまねる。タイハクオウムC. albaはハルマヘラ島などに産し、羽冠まで全白色。人語も話す。ルリメタイハクオウムC. ophthalmicaはニュー・ブリテン島、ニュー・アイルランド島産。羽冠は円く先は黄色、眼囲が青い。飼い鳥としては少ない。クルマサカオウムC. leadbeateriはオーストラリア産で、羽冠は白、赤、黄の帯をなし、体もピンクでこの類でもっとも美しい。モモイロインコC. roseicapillaはオーストラリアに大群をなしてすみ、飼い鳥としてもっともよく知られるが、人語は巧みではない。背面灰色、下面バラ赤色、頭部は淡白色。そのほか、テンジクバタン、ムジオウムなどの小形で羽冠の小さいものがある。また、ヤシオウムとクロオウムは黒色系の特殊な種である。オカメインコはオウム科のなかでただ1種尾が長く、草地性で、おもに草の種子を食べる。
[黒田長久]
人間との関係
オウム類は2000年の昔からヨーロッパで飼われ、日本には647年(大化3)以来朝鮮から献上されて渡来した(『日本書紀』『枕草子(まくらのそうし)』などによる)。穀類、果実、青菜などで飼育が容易で、長寿例が多く、30~50年、ときに80年、キバタンでは100年以上の例もあるという。オウム類は前述のように群生し、社交性に富むため、単独で飼われると、人に社交性を求めて、人語をまねると思われる。
[黒田長久]