改訂新版 世界大百科事典 「オナシス」の意味・わかりやすい解説
オナシス
Aristoteles Socrates Onassis
生没年:1906-75
世界的な大船主。ギリシア領だったスミルナ(現,トルコのイズミル)に生まれたが,トルコ人による1922年のスミルナ占領でギリシア本国に難を逃れ,翌年アルゼンチンのブエノス・アイレスに渡った。電話会社に就職した後,タバコの輸入販売で富を築いた。30年にブエノス・アイレスのギリシア総領事に任命され,31年に6隻の中古船を購入してはじめて船主となった。当時,世界経済は大恐慌下にあり,海運業も船腹過剰による不況に悩んでいた。オナシスはこの時期の超安値で中古船を購入し,これを海運市況が回復するまで係船するという戦略をとった。これ以来,安値で中古船を購入し,これに安い賃金でギリシア船員を配乗して便宜置籍国に登録し,オナシス・ファミリー(同族企業グループ)で経営管理するという独特な経営方式で,不定期船市場にその地歩を固めていった。第2次大戦後はいちはやくアメリカ市民権をもつ2児の名義でニューヨークに海運会社を設立し,有利なアメリカ国有船の払下げとタンカー建造に対するアメリカ政府融資を受けて大きな成功を収め,一大海運王国を築き上げた。歌手のマリア・カラス,ケネディ元米大統領夫人ジャクリーンとの恋愛,結婚でも話題を提供した。なお,ギリシア船主の中には,古くからギリシア本国とは非常に関係の薄い特異な海運経営活動を展開している者が多く,この種の船主を一般にギリシア系船主と呼ぶ。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報