一般の機械と同様に、コンピュータにおけるソフトウェアも部品の組合せで構成されている。したがって、複雑なソフトウェアを効率よく、かつ誤りを少なく構築するためには、この部品をどのような基本概念で構成すればよいかが、きわめて重要な課題であり、さまざまな試みがなされてきた。初期の、そして現在でも多くのソフトウェアでは、「手続き」の概念で部品がつくられる。すなわち、対象(入力データ)を処理して出力データをつくる手順を、他の部品を呼び出す操作を加えながらまとめ上げ、それを部品として全体のプログラムに組み立てる。それに対し、オブジェクト指向プログラミングでは、世界をモノ(オブジェクト)の集合であるととらえ、オブジェクトの概念を単位として部品をつくり、オブジェクトどうしのメッセージ(信号)交換によって全体のプログラムが機能するべく構成する。具体的には、各オブジェクトは、その性質を規定するいくつかの属性データと、他のオブジェクトから送られるメッセージへの反応を規定する手続きによって構成される。すなわち、複数の属性と複数の手続きをひとまとめにして単位部品がつくられる。手続き部分は、自分の属性データを変化させ、あるいは他のオブジェクトへメッセージを送り出すステップからなる。オブジェクトは分類され、クラスとよぶ上位概念に関連づけられ、それを利用してプログラム作製の容易化、簡単化などを図ることができる。オブジェクト指向のプログラム言語としては、1968年に発表されたSIMULA(シミュラ)68を嚆矢(こうし)とするが、最近では、インターネットの代表的情報システムであるWWWなどで広く使われるJava(ジャバ)が有名である。この概念は、プログラミングのみならず、データベースやヒューマン・インターフェースなどコンピュータ技術全般に広く行き渡りつつある。
[田村浩一郎]
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