オリエント(その他表記)Orient

デジタル大辞泉 「オリエント」の意味・読み・例文・類語

オリエント(Orient)

東方の国々。東洋。東方。⇔オクシデント
メソポタミアおよびエジプトを中心とする地方。地中海以東、インダス川以西をいう。また特に、トルコアラブをさす。

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精選版 日本国語大辞典 「オリエント」の意味・読み・例文・類語

オリエント

  1. ( [英語] Orient )
  2. [ 一 ] エジプト、メソポタミアを中心とする小アジア西南アジア・北アフリカ地方のこと。世界最古の文明発生地。東方。
  3. [ 二 ] アジアの総称。特に東アジアをさす。東洋。〔外来語辞典(1914)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「オリエント」の意味・わかりやすい解説

オリエント
Orient

原語はラテン語のoriens〈昇る(こと)〉で,もともと〈日出づるところ〉〈東方〉という方位を指示する語であった。したがって,ローマ時代には帝国内の東部にたいしても適用され,もちろん帝国外の東方を指す場合にももちいられた。オリエントと対になる語はオクシデントOccident(ラテン語occidens〈日没するところ〉〈西方〉)であるが,西ヨーロッパの人々がみずからをオクシデントと称し,オリエントを異質の文化をもった東方世界として対置させるようになるのは,ローマ帝国が東西に分裂し,西ヨーロッパが自己の世界を形成していく過程と深くかかわっていた。その場合のオリエントはまずビザンティン帝国であり,次いでイスラム世界を意味した。その後,ヨーロッパ人の地理的知識の拡大とともに,オリエントの範囲はさらにひろがり,インドから中国,日本まで含まれるにいたった。現在,オリエントは広義において〈近東〉〈中東〉〈極東〉の総称として使用されているが,狭義において最古の文明地域の呼称として,すなわち〈古代オリエント〉の意味においてもちいられることも少なくない。日本において歴史用語として〈オリエント〉が初めて現れるのは,1943年に文部省が発表した中学校(旧制)および高等女学校の〈教科教授及修練指導要目(案)〉においてである。ここでは〈地中海文化ノ形成〉の第1項として〈オリエント〉が挙げられており,したがって古代オリエントが取りあつかわれることになっている。しかし,その当時から,古代オリエントの地域,今日では〈中近東〉とか〈中東〉と呼ばれている地域が古代から現代にいたるまで一つの完結した歴史的世界を形成してきたという認識にもとづいて,この歴史的世界を〈オリエント〉と名づける主張が提起されていた。それは同時に,明治以来の東アジア史を主体とした東洋史と西ヨーロッパ史を中心とした西洋史の2分野の枠組みを依然として維持しつづけてきた日本の外国史研究のあり方にたいする批判を含んでいた。戦後,この主張にもとづいて,古代オリエントのみならずイスラム学の研究者を包括する学術団体として,54年に日本オリエント学会が創立されている。
中東
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリエント」の意味・わかりやすい解説

オリエント
おりえんと
Orient

インダス川から西の地中海に至る地域。すなわち、現在のイランからアラビア半島、エジプトを含めた地方をいう。ラテン語の、太陽の昇る方向、または地方を意味する「オリエンス」が語源であり、ローマ時代に、イタリア半島を中心として、西方はオクシデンス、すなわち太陽の没する地方とよばれた。ローマ時代には最初はギリシア地方を意味したが、ローマ人の地理的知識の増大、とくにアレクサンドロス大王の東征以来、オリエンスはインダス川まで拡大した。

 かつてこの地域はメソポタミア文明エジプト文明など世界最古文明を生んだが、アレクサンドロス大王の東方遠征によって東方文明の影響を受けた。その後のオリエントの文化的基盤はギリシア文化となったが、完全にギリシア文化化されたものではなく、エジプトのコプト文化、シリアから東方のシリア文化はこの地域独特のもので、オリエント文化とよばれる固有の文化である。7世紀以降イスラム文化が興ったが、一般的にいってこの地方は大部分が不毛の砂漠や山岳地帯で、文化的後進地域であることが多かった。しかし、地理的には3大陸の接点にあたるため、東西文明交流の掛け橋としての役割を果たした。また近代から現代にかけては、軍事的にも重要な地域であるとともに、豊富な石油資源の発見以来、政治的、経済的に重要な地域ともなっている。

[糸賀昌昭]

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百科事典マイペディア 「オリエント」の意味・わかりやすい解説

オリエント

ラテン語オリエンスoriens(〈日出ずるところ〉〈東方〉の意)に由来し,同じくラテン語オクキデンスoccidens(〈日没するところ〉〈西方〉の意)から来るオクシデントOccidentに対する語。本来,ローマ帝国内外の東部を指したが,帝国の東西分裂以降,西ヨーロッパが独自の歴史的世界を形成していくに従って,自らとは異質なビザンティンおよびイスラム世界,さらにはインド,中国,日本などもを意味するようになる。すなわち,最広義にはいわゆる〈近東〉〈中東〉〈極東〉を包含する語であるが,通常は文明発祥の地としての〈古代オリエント〉(メソポタミア,エジプトおよびその周辺)を指すことが多い。いずれにせよ,あくまで西ヨーロッパの自己理解にもとづく相対的概念であるとともに,その歴史観・文明観に深く根ざしたものであって,オリエントにまつわる全表象がイデオロギーの産物と言える。いわゆるオリエンタリズムが問題となるゆえんである。
→関連項目エーゲ文明中東西アジア

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「オリエント」の解説

オリエント
Orient

語源はラテン語「orior(昇る)」から派生した「oriens(東方)」に求められる。元来はローマもしくはイタリア半島からみて東方の地を意味したらしい。時代によりその範囲は一定しないが,おおむね現在では中近東と呼ばれる,西アジアにアフリカ北東部を加えた地域をさす。歴史的には前4世紀のアケメネス朝滅亡までを古代オリエント時代,7世紀のアラブ・ムスリムによる征服以降をイスラーム時代,その間の時代は広義のヘレニズム時代と区分できるが,最後の時代に「オリエント」という語が使われることはあまりない。メソポタミア,エジプトの二大古代文明がこの地に発祥し,その影響下に周辺のシリア・パレスチナ,アナトリア,イランなどにも独自の文明が興った。前8世紀にアッシリアが,ついでアケメネス朝が全域の統一に成功。文明を構成する諸要素のうち,法律,官僚などの政治制度,アルファベット系の文字,ユダヤ教キリスト教,イスラームの三大宗教など,この地で生まれたものは数知れない。

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旺文社世界史事典 三訂版 「オリエント」の解説

オリエント
Orient

元来,漠然と古代ローマ以東の地をさしたが,近代以後,地中海東岸からインダス川に至るエジプト・メソポタミア・シリア・パレスチナ・小アジア・イランを含めた古代文明世界をさす
ラテン語のOccidens(落ちる)に対する,Orior(出る)の名詞形Oriens(日の出,すなわち東方)に由来する。代表的な国家には,シュメール人の都市国家,エジプト,古バビロニア王国,ヒッタイト,ヘブライ王国,フェニキア,アッシリア,新バビロニア王国,ペルシア帝国などがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オリエント」の意味・わかりやすい解説

オリエント

「中東[古代]」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のオリエントの言及

【タバコ(煙草)】より

…排水のよい土壌と日照豊富な気象条件が望ましい。(2)オリエント種 葉型が小さく,特有の芳香をもつ空気乾燥種で,シガレットのブレンドに香味を付加する原料として必要である。ギリシア,トルコ,ブルガリアなどの地中海性気候の乾燥地帯に主要産地があって,多日照と極端な寡雨が特有の香味を生み出す。…

【アジア】より

…この場合,対応概念は同一で,語源が異なるにすぎない。ラテン語のローマ世界は,ギリシア世界より拡大したにもかかわらず,大国ローマによる平和(Pax Romana)のため東方との大規模な戦争がなかったから,オリエントの語義が地理的に拡大したとは考えられない。なおローマ帝国には,古代イオニア都市の一つのエフェソスを中心としたアジア州がおかれたが,これは現在のトルコ西部の一部の狭い地域を指すものであった。…

※「オリエント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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