オルバースのパラドックス(英語表記)Olbers' paradox

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

オルバースのパラドックス
Olbers' paradox

宇宙における恒星分布無限遠まで一様で,その光度が場所によらないとすると,夜空無限に明るく輝くことになるというパラドックス。1826年ウィルヘルム・オルバースが提唱した。観測者を中心として,ある距離にある球殻内の 1個の星からくる光の量は球殻までの距離の 2乗に反比例して減少するが,球殻内にある星の数は距離の 2乗に比例して増加するので,この球殻内にある星の光を集めた明るさは球殻までの距離によらず一定の値をもつと考えられた。したがって,このような球殻を次々と無限遠まで重ね合わせると,観測者の見る空の明るさは無限大になるというパラドックスの前提が成立しているように思われる。このパラドックスの解決のため,宇宙空間に光を吸収する物質があると考えられたが,吸収物質が光を吸収しても必ず再放出するので解決にはならない。事実は,宇宙の奥行は無限遠ではなく,また宇宙の膨張により遠く銀河ほど赤方偏移が大きく,光の強度が弱まっているのである。

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世界大百科事典 第2版 の解説

オルバースのパラドックス【Olbers’ paradox】

オルバースH.W.M.Olbersが1823年に提起した宇宙の有限か無限かに関する設問。実はハリーE.Halleyがすでに1世紀前に提起したとの説もある。すなわち,宇宙が無限に大きく,しかも天体の数の密度が時間的空間的に一定ならば,空の明るさは昼夜の別なく無限大となるはずである。なぜなら,距離rにある天体の数はr2に比例し,光はr-2に比例して暗くなるので,その積はrによらない。したがってr=0からrまで積分した光量rに比例し,r→∞で光量は∞となる。

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百科事典マイペディア の解説

オルバースのパラドックス

宇宙が有限か無限かに関して,H.W.オルバースが1823年に提起した設問。宇宙が無限に大きく,かつ天体の数の密度が時間・空間的に一定ならば空の明るさは夜昼区別なく無限大となるはずで,夜空が暗いことは,途中での光の吸収がないとすれば,宇宙が有限であることの証拠となるのではないか,というもの。実際には,宇宙が無限でも膨張のために光が到達する範囲は有限になり,受ける光量も有限となるので,夜空が暗くても星間吸収や宇宙が有限であることの証拠にはならない。

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法則の辞典 の解説

オルバースのパラドックス【Olbers paradox】

宇宙が静的で一様な系であるならば,それぞれの恒星の発する光と吸収する光とは同量でなければならない.すると星の吸収する光は無限遠方からくるものとなり,夜空は暗黒とはならず,昼のように明るくなるはずである.このパラドックスは,宇宙が膨張を続けていることで解決される(なお,このパラドックスに対しての最初の解答を与えたのはエドガー・アラン・ポオであった).

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