改訂新版 世界大百科事典 「カシワ」の意味・わかりやすい解説
カシワ (柏)
daimio oak
Quercus dentata Thunb.
ブナ科の落葉木。やせ地や乾燥に強いので,海岸や丘陵の岩礫地(がんれきち)に林をつくることが多い。また野火にも抵抗性があり,山火事のあとにも生き残る。枝はやや太く縦に溝があり,若枝には毛を密生する。葉は互生で枝の先端部に集まってつくことが多い。倒卵形で縁には丸い大きな鋸歯があり,葉柄はごく短い。特に葉裏に星状毛が多い。花は5月ころ,新葉と同時に開く。雄花は新枝の下部に多数の黄色のひも状の花序をなして垂れ下がり,雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)に少数つく。雄花は6~8本のおしべを花被が包んでおり,雌花は3本のめしべを鱗片状の花被が包む。果実はどんぐりで,長くて反り返った鱗片が密生する殻斗に包まれる。北海道,本州,四国,九州,南千島,沿海州,中国,朝鮮,台湾に分布する。〈かしわ〉は〈炊(かし)ぐ葉〉の意味で,昔,食物を蒸す時に使われた大型の葉にはこの名がある。柏餅に使うカシワはその代表で,他にヒノキ科のコノテガシワ,モクレン科のホオガシワなどがある。樹皮はタンニンを含み,皮なめしなどに使われ,庭園樹や街路樹になる。材は堅く,建築材や枕木に使われる。
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報