カナガシラ(読み)かながしら(英語表記)gurnard

翻訳|gurnard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナガシラ」の意味・わかりやすい解説

カナガシラ
かながしら / 金頭
gurnard
[学] Lepidotrigla microptera

硬骨魚綱カジカ目ホウボウ科に属する海水魚。北海道南部から東シナ海にかけての沿岸部を中心に分布する底生魚で、底引網によって多獲される。5~6月の産卵期には浅所に産卵回遊を行い、直径1.2~1.3ミリメートルの球形浮性卵を産む。ホウボウ科の特徴として、頭部に堅い骨格と多数のとげを発達させるが、とくに吻端(ふんたん)の叉(さ)状の2棘(きょく)は顕著な形質である。近縁種ホウボウとは、鱗(うろこ)が大きくざらざらしていることや、背面や胸びれ斑紋(はんもん)がないことで容易に区別される。また、ほかの近縁種とは、背びれ深紅色の斑紋(ホルマリン固定すると黒色になる)をもつことで識別できる。なお、このひれの第2条がとくに長いことからヒレダカという地方名もある。非常に美味な魚で肉は白い。魚市場における本種の符帳として「い」の字が使われるが、これはカナガシラをさして平仮名(いろは)の頭文字をあてた洒落(しゃれ)である。本科には5属16種の日本産種が知られており、ホウボウ、カナガシラのほかに、カナドLepidotrigla guentheri、ソコカナガシラL. abyssalis、オニカナガシラL. kishinouyeiなどが比較的普通に漁獲される。いずれも20センチメートル未満の小形種であるなかで、カナガシラは40センチメートルに達する最大種である。

[沖山宗雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「カナガシラ」の意味・わかりやすい解説

カナガシラ
Lepidotrigla microptera

カサゴ目ホウボウ科の海産魚。同科のホウボウ外形はよく似ているが,うろこが大きく,また第1背びれの後半部に深紅色の大きい1斑紋があることで区別される。北海道南部以南の日本沿岸,東シナ海,黄海に分布し,水深200mくらいまでの砂地に生息する。体色は紅色で,腹面は白く,胸びれの内面は一様に赤いが,とくに顕著な斑紋はない。全長40cmに達し,カナガシラ類中もっとも大きい。胸びれの一部が変化した歩行肢で海底をはいまわる。エビ,オキアミ,アミなどの甲殻類小魚主食とする。産卵期は3月から5月。大型魚は深いところで,小型魚は浅いところで越冬する傾向がある。黄海や東シナ海では底引網で多量に漁獲されるが,とくに五島列島から台湾にかけての大陸棚縁辺での水域で密度が高く,重要な漁業対象魚となっている。味はホウボウよりも劣るが,塩焼きやてんぷらにすると美味である。しゅんは冬。
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百科事典マイペディア 「カナガシラ」の意味・わかりやすい解説

カナガシラ

ホウボウ科の魚。地方名はキミヨ,キントウ,カナンドなど。全長40cmに達する。体の背側部は赤く,第1背びれに深紅色の斑紋がある。本州〜東シナ海,黄海に分布。機船底引網やトロール網で漁獲する。近縁の数種を混称することも多く,いずれも美味。
→関連項目底魚

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナガシラ」の意味・わかりやすい解説

カナガシラ
Lepidotrigla microptera

カサゴ目ホウボウ科の海水魚。食用に供され,美味。全長 30cm。体の上・側部は赤く,下部は白く,第1背鰭の後半部に深紅色の大きな斑紋が 1個ある。吻は短く,眼が大きい。北海道南部,本州各地沿岸,黄海から南シナ海に分布する。

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