デジタル大辞泉
「カバラ」の意味・読み・例文・類語
カバラ(Cabbala/〈ヘブライ〉ḳabbālāh)
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カバラ
ユダヤ教の神秘思想。Kabbalah,Kabbala,Cabalaなどの表記あり。ヘブライ語の原義は〈口伝〉ないし〈伝統〉で,口承の秘儀の意。3柱,4界,10のセフィロト(数)による〈生命の樹〉で象徴的に表される流出説的世界像と,敬虔主義的信仰生活を特徴とする。《セーフェル・イェツィーラー(形成の書)》《セーフェル・ハ・バーヒール(清明の書)》《ゾーハル(セーフェル・ハ・ゾーハル,光輝の書)》などが重要文献。13世紀以降復興され,モーセス・デ・レオン,ルリア,サバタイ・ツビ,さらにハシディズムを介してM.ブーバー,G.ショーレムらの思想家を生んだ。ルネサンス期にはピコ・デラ・ミランドラ,ロイヒリンを代表とする〈キリスト教カバラ〉の試みもあり,後世の神秘主義への影響は絶大である。
→関連項目神秘主義|ネルバル|ユダヤ教|レビ|ロイヒリン
カバラ
ギリシア北東部,マケドニア地方の同名県の県都。エーゲ海に臨む港市。マケドニア・タバコの製造と輸出,繊維工業が行われる。付近に古代のネアポリスの遺跡がある。エジプト最後の王朝の始祖ムハンマド・アリーの生地。6万800人(2001)。
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カバラ
Kabbalah; Kabala
12~13世紀頃に形成されたユダヤ神秘主義および神智学の発展した形態をいい,さらに一般的には,古代にまでさかのぼるユダヤ教の一連の秘教的な教理をいう。カバラは語源からいって「受取られたもの」をさし,モーセ五書以外のユダヤ教の諸書および預言書を意味した。 12~13世紀にライン地方で始った敬虔主義的な運動のなかでは,父祖伝来の祈祷を解釈するために,各アルファベットに一定の数を当てて文章の数値を発見したり,頭文字の組合せによる造語を行うなどの方法が用いられた。こうした解釈技法は,また瞑想の技法としても体系化され,やがて南フランスからスペインにかけて広まって,最盛期を迎えた。ナハマニデスのモーセ五書注解はその代表作の一つとされる。そのなかでは,注釈の形を借りて,正統的ユダヤ教では触れられることのない無限なる神の隠れたる秘義が探求されている。こうした方向は,その後のユダヤ教思想の展開に大きな影響を及ぼし,18世紀にはハシディズムという形態をとって,東ヨーロッパのユダヤ人の多くに浸透した。
カバラ
Kavála
ギリシア北部,マケドニア地方東部の都市。セサロニキの東北東約 130km,エーゲ海のカバラ湾にのぞむ港湾都市で,古代にはネアポリス,ビサンチン時代にはクリストゥポリスとして知られた。 1387~1912年オスマン帝国領。その後ギリシア領となったが,エーゲ海への出口を求めたブルガリアによって 12~13年,16~18年,42~44年占領された。現在ギリシア北部のタバコ栽培地帯の主要積出港。市の東に広がる干拓地ではイネやメロンが栽培される。旧市街のそばにローマ時代の水道橋が残っているほか,ローマ時代やビザンチン時代の遺跡,美術品などが多数保存されている。人口5万 8576 (1991推計) 。
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カバラ【Kaválla】
ギリシア北部,エーゲ海に面する港町。人口5万8000(1991)。日本にも輸入されているマケドニア産の葉タバコの積出港である。古代にはネアポリスNeapolisと呼ばれて栄えた港で,近東からヨーロッパへ行く旅人がよく利用した。パウロも第2回の伝道でここからテッサロニケに向かっている。エジプトのムハンマド・アリー朝の祖ムハンマド・アリーはこの町で生まれた。ここは1912年までトルコ領で,その後ギリシア領となったが,それから第2次大戦までに3回にわたってブルガリアに占領された。
カバラ【Kabbalah】
カバラ(正しくはカッバーラーQabbālāh)とはヘブライ語でユダヤ教の密教的部分,口から耳に直接伝授された,師資相承の〈口伝〉もしくは〈伝統〉を意味する語で,Kabbala,Cabalaなどとも表記される。厳格な参入儀礼を経て資格をもった弟子にだけ教えられ,長い間,秘密の闇に隠されていたカバラが世に知られるようになったのは,13世紀におけるスペインのユダヤ人の著作からである。カバラは〈神〉を信仰の対象ではなく,認識の対象とし,直接〈神〉に近づき,その目前に仕えること,つまり〈臨在〉への道を教える。
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カバラ
カバラはヘブライ語で「伝承」という意味。ユダヤ教の神秘的な秘法を司る教えを持つ宗教結社のこと。聖書の中ではパリサイ派と呼ばれる。旧約聖書の秘儀的な解釈によって、宇宙の真理を追求している。信者には、セフィロトの樹(生命の樹)から循環する力が宇宙を形成しているという思想があり、その生命の樹を中心に秘儀を行った。ラビ(カバラの指導者)達によって、ひそかに語り継がれ、薔薇十字団やフリーメーソンにも大きな影響を与えた。
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世界大百科事典内のカバラの言及
【木】より
…オーストラリアのシューマンは,魔法の木をさかさまに植え,そこに人の血を注いだのち,これを焼く。中世のユダヤ神秘主義,とくにカバラには,神の顕現としての宇宙創造をさかさまの木としてあらわすイメージがあり,カバラ文献《バヒール》(12世紀),《ゾーハル》(13世紀)は,上から下に伸びる太陽のような木について記している。このとき,神から流出する力を〈セフィロト〉と呼ぶ。…
【ゲマトリア】より
…カバラにおける文字転換法の一つ。ヘブライ語のアルファベットはそれぞれの数値をもっており,その文字の組合せである単語または文章も一定の数値をもつことになる。…
【神秘主義】より
…〈唯一つ真に存在する光は神自体であり,万物は神の本質的な光から発せられる光線にほかならない〉。イスラム神秘主義(4)ユダヤ教 ユダヤ教においても,形式的律法主義に陥る危険に反対して神秘主義の運動があるが,特異なものとしては,主として13世紀にスペインで展開したカバラと18世紀初頭ポーランドやウクライナのユダヤ人の間に広まったハシディズムがある。カバラとはヘブライ語で〈伝承〉の意味であるが,ここでは神や世界に関して受け継がれた秘義による神智学的神秘説をいう。…
【セーフェル・イェツィーラー】より
…《ゾーハル》と並ぶカバラの根本経典。書名は〈形成の書〉の意。…
【ユダヤ教】より
… 他方,キリスト教化したスペインから15世紀末に追放されたスファラド系ユダヤ人は,中東各地に移住した。その一部が定着したパレスティナのツファットは,16世紀にカバラ神秘主義の中心となった。カバラの起源は,ヘレニズム・ローマ時代のユダヤ人が著作した黙示文学である。…
【ユダヤ哲学】より
…1288‐1344)などの名をあげることができる。以上のほかに,中世のユダヤ思想をもっとも強く特色づけたものは,ユダヤ教の神秘説カバラの思想である。神秘思想はかならずしもユダヤ教の本流をなすものではないが,空虚な形式主義に陥りやすい律法主義に対して,その内部から新鮮な生命を吹き込み,その精神化に役だったことは大きな功績であった。…
※「カバラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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