カボチャ(英語表記)Cucurbita Spp.

精選版 日本国語大辞典 「カボチャ」の意味・読み・例文・類語

カボチャ

  1. ( [ポルトガル語] Cambodia から )
  2. [ 1 ] カンボジア王国
    1. [初出の実例]「丸山の噂、南京(なんきん)の小哥、漢浦塞(カボチャ)のおどり、阿蘭陀(ヲランダ)の銭よむまねなどするうち」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)四)
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 南瓜 )
    1. ウリ科のつる性一年草。アメリカ大陸原産で、植物学上ニッポンカボチャ、クリカボチャカザリカボチャの三種に分けられる。その一種、ニッポンカボチャは、いちばん古く天正年間(一五七三‐九二)中国を経て九州に渡来し、その後日本各地に広まり、重要な野菜となった。茎は長いつるとなって地をはい、巻きひげがある。葉は互生し、大形の心臓形で縁が浅く五裂する。夏、花冠の五裂した黄色の花が咲く。単性花で雌花の子房は大きくふくらんでいる。花後、ひょうたん形や扁球形の大形の果実を結ぶ。果実と種子は食用となる。本種ははじめカンボジア原産と考えられていたので、この名があるという。とうなす。なんきんボーブラ。ひゅうがうり。カボチャうり。《 季語・秋 》

▼カボチャの花《 季語・夏 》 〔倭語類解(17C後‐18C初)〕

  1. 顔がみにくく、品のない者。人や身体の部分をさす語の前に付けても用いる。「カボチャあたま」「カボチャやろう」など。
    1. [初出の実例]「泊り客けふもかぼちゃと笑出し」(出典:雑俳・露丸評万句合‐明和三(1766))
  2. 下級の遊女の俗称。
    1. [初出の実例]「市兵衛が南瓜の夢に太夫職」(出典:雑俳・俳諧觿‐二五(1821))

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改訂新版 世界大百科事典 「カボチャ」の意味・わかりやすい解説

カボチャ (南瓜)
Cucurbita Spp.

ウリ科の一年草で重要な野菜である。日本で栽培しているカボチャには植物分類学上次の3種がある。(1)ニホンカボチャC.moschata Duch.(英名pumpkin) トウナスボウブラとも呼ばれた。(2)セイヨウカボチャC.maxima Duch.(英名winter squash) クリカボチャともいう。(3)ペポカボチャC.pepo L.(英名summer squash) 観賞用のカザリカボチャ(オモチャカボチャともいう),飼料用のポンキンが含まれる。

(1)ニホンカボチャは原産地が中央アメリカから南アメリカ北部の熱帯地方で,東アジアの多湿地帯から温帯北部に分布している。日本への渡来はニホンカボチャが最も古く,16世紀に豊後国にポルトガル船によって伝えられ,その後各地に栽培が広まった。カボチャと呼ぶようになったのはカンボジアに生じたものと考えて名づけられた。ボウブラはポルトガル人が長崎へカボチャを伝えたとき,ポルトガル語でaboburaといったのがなまったものといわれている。トウナス(唐茄子)は果形がナスに似ているため中国から渡来したナスという意味の名である。(2)セイヨウカボチャは中央アメリカから南アメリカ高原地帯の原産で,分布は原産地を反映して北アメリカ,北ヨーロッパ,シベリア地方に多い。日本へは19世紀の中ごろ,アメリカから伝えられたが普及せず,明治に入って多くの品種を導入し,北海道,東北,長野の高冷地方で栽培された。(3)ペポカボチャは北アメリカ南部の原産で,南ヨーロッパ,アメリカなどで野菜用,飼料用として栽培が多い。日本への渡来はセイヨウカボチャよりさらにおくれて導入されたが,飼料用栽培以外は少なく,自家用程度である。

草姿はつる性で地上をはうが,ペポカボチャ,セイヨウカボチャの中には矮性でつるにならないものもある。葉形はペポカボチャが切れ込みが深く三角形に近い。他の2種は切れ込みがないかあるいは少ない。しかしニホンカボチャは葉片が角ばり,セイヨウカボチャは丸みを帯びる。また,ニホンカボチャの果柄は果実に接する部分が五角形に拡大,ペポカボチャは果実に接する部分が多少広がる程度,セイヨウカボチャは果柄が丸く膨大する,といった果柄接着部の形状の違いで3種をはっきり区別できる。

日本各地に土着したニホンカボチャは改良が加えられ,特色ある品種が多数育成された。1921年の調査で143の品種が数えられ,果形,果皮色,果面のこぶ状隆起の有無などで六つの品種群に分けられた。その後しだいに地方品種は姿を消したが,その中から居留木橋(いるきばし)カボチャ型に属する品種が発達し,主要品種の大部分がこの型に属する。一方セイヨウカボチャは食味のよいデリシャス系を中心に多くの系統,品種が育成され,かつて生産の大半を占めていたニホンカボチャに代わって最近ではセイヨウカボチャが生産の主流を占めている。そのほか種間雑種としてセイヨウカボチャとニホンカボチャの1代雑種も育成,利用されている。またこの種間雑種は暑さ,寒さによく耐え,生育も旺盛でキュウリメロンなどの耐病性台木として利用されている。

カボチャはウリ科のなかでも作りやすい野菜で,なかでもセイヨウカボチャはニホンカボチャより低温でもよく生育する。しかし,高温になると発育や着果が悪くなり,食味も落ちる。栽培は10月まき1~3月収穫の促成,12月まき4~5月収穫の半促成,2月まき6~7月収穫の早熟,4~5月まき7~8月収穫の露地,8月まき10~11月収穫の抑制栽培がある。カボチャは一般に吸肥力が強く,生育旺盛になりやすいため着果が悪い。自然放任では雌花開花数の20%程度の結実である。したがって雌花開花中は午前9時ころまでに人工交配をする。開花後30日前後で収穫する。カボチャは病虫害の少ない作物で,防除の必要も少ない。主産地は北海道,茨城,鹿児島などである。

カボチャは果菜として最もデンプンに富み,イモ類,マメ類についでカロリー価も高く,第2次大戦中は代用食として使用されたが,戦後は再び調理用として利用されている。また多量のビタミンAと若干のBおよびCを含み,ビタミン源としても重要な野菜である。調理用としては煮物,汁の実,てんぷら,裏ごししてポタージュやパイに用いるほか,加工用原料としても利用される。また家畜の飼料用に,品種によっては観賞用とする。そのほか,土壌伝染性のつる割れ病に強く,キュウリ,メロン,スイカなどの耐病性台木として利用している。
執筆者:

食用にはならないが,果実が小型で形や色彩がおもしろいので装飾用に用いるペポカボチャ。オモチャカボチャ,カザリカボチャとも称する。原産地は北アメリカ南部で,性状はセイヨウカボチャとほぼ同じであるが,つるにならないものもある。果実の形は球形,とくり形,洋梨形などさまざま。果皮は堅く,白色,橙色,緑色,下半分が黄橙色,下半分が緑色,条斑など変化に富み,平滑なものやいぼ状突起のあるものがある。種まきは5月に直まきとするか3月にフレームや温室でまき,苗を5月に元肥を十分に入れた土壌に植える。栽培中,高温と乾燥にあうとウイルス病に侵される傾向が強いから,十分灌水につとめる。収穫は果皮が堅くなってからがよく,そのまま装飾に用いる。貯蔵中1~2月の低温にあうと果皮や果肉が腐るから高温を保つ。
執筆者:

カボチャはボウブラ,ナンキン,トウナスとも呼ばれ,冬至に食べると中風や風邪を患わないという。冬至にカボチャを食べる風習は江戸時代に広まったと考えられる。冬至は太陽が最も衰える日であり,太陽を象徴した野菜や果物を食べるようになったとも考えられる。カボチャは冬至を過ぎてから食べるものでないとか,年を越させると腐るともいい,冬至に食べるカボチャをあらかじめ定めておく所もある。カボチャはつる状の茎をもち,唐津市神田では,領主が攻められて逃げたときにこのつるに足をかけて殺されたのでカボチャを作らないといい,宮城県角田市郡山では,昔カボチャを作ったところヘビが中に入っていたので,それ以来作らないと伝えている。アメリカではハローウィーンにカボチャの提灯jack-o'-lanternを戸口に立てる風習が盛んである。
執筆者:


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食の医学館 「カボチャ」の解説

カボチャ

《栄養と働き》


 カボチャは、日本カボチャと西洋カボチャの2種に大別されます。
 メキシコ原産の日本カボチャは、高温地帯での栽培が適した種類。わが国には16世紀にポルトガル船によって九州に渡来しました。その際、カンボジア産の野菜だと伝えられたことから「カボチャ」と呼ばれるようになったといわれています。
 一方、ペルー原産の西洋カボチャは寒冷地帯に適しています。わが国へは19世紀ころ、アメリカから伝えられ、北海道を中心に分布しました。いまでは「栗カボチャ」とも呼ばれ、こちらのほうが主流になっています。
○栄養成分としての働き
 カボチャの特徴といえば、なんといってもカロテンが豊富に含まれていることですが、日本カボチャと西洋カボチャとでは、含まれる量に多少差があります。
 西洋カボチャのほうが栄養的には上で、ゆでたものをくらべると、日本カボチャ100g中に含まれるカロテンは830μgなのに対し、西洋カボチャは4000μgも含んでいます。同じくゆでたものでビタミンCは100g中32mgと日本カボチャの2倍、カリウムは430mgで日本カボチャよりやや少なめです。
 カロテンは体内でビタミンAにかわって肌や粘膜(ねんまく)を丈夫にし、感染症に対する抵抗力をつけます。
「冬至にカボチャを食べるとかぜをひかない」といわれるのは、そのためです。
〈カボチャ200gで1日のビタミンE所要量を満たす〉
 またカボチャは、100g中に生で4.9mg、ゆでても4.7mgとビタミンEを多く含む野菜でもあります。ゆでたカボチャを4切れほど食べれば、ビタミンEの1日の所要量を満たせます。
 ビタミンEには強力な抗酸化作用があり、活性酸素の害から体をまもって、老化防止や動脈硬化症の予防が期待できます。血行を改善する働きもあるので、冷え症や肩こりなどの症状をやわらげる作用も。
 ミネラルやビタミン類が豊富なカボチャの種を食べれば、さらに栄養価がプラスされます。水洗いして乾燥させ、フライパンで炒(い)って食べましょう。

《調理のポイント》


〈切り口の色の濃いカボチャほどカロテンが豊富〉
 持ってみてズッシリと重く、上皮がかたいものを選びましょう。カット売りのものは、種子の部分が引っ込んでいなくて、種子がつまっているもの、黄色が濃いものが良質です。
 旬(しゅん)は夏。8月から10月にかけてが最盛期です。長期にわたって保存できるので重宝します。
 西洋カボチャはホクホクとした粉質が特徴。お菓子やポタージュにむいています。外形がデコボコした「菊座カボチャ」などの日本カボチャは繊維が多く、粘り気が強いので型くずれしにくいのが特徴です。てんぷらや味噌汁の具、煮ものなどにむいています。
 豊富なカロテンを有効にとるには、油といっしょにとることです。てんぷらやソテーなどにすれば、吸収がよくなります。
 カボチャを食べすぎると肌が黄色くなることがありますが、カボチャの色素が汗腺(かんせん)から排出されるためで、害はありません。

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栄養・生化学辞典 「カボチャ」の解説

カボチャ

 南瓜と書く.スミレ目ウリ科カボチャ属の,一年草,および,その果菜.ニホンカボチャ[Cucurbita moschata],セイヨウカボチャ[C. maxima],ペポカボチャ[C. melo var. melopepo]がある.

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デジタル大辞泉プラス 「カボチャ」の解説

カボチャ

1928年公開の日本映画。監督・原作:小津安二郎、脚色:北村小松、撮影:茂原英雄。出演:斎藤達雄、日夏百合絵、阪本武ほか。

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世界大百科事典(旧版)内のカボチャの言及

【ウリ(瓜)】より

…果実は液果状で,ふつうは裂けないが,ゴキヅル(イラスト)のように中央で横にふたをとるように裂けるもの,テッポウウリのように熟して果実が柄からはなれると,内部の果液とともに種子を射出するものもある。 ウリ類の果実の形,色,果肉の性質などは,メロン類,カボチャ類,それにヒョウタンに見られるように変異に富み,ときには同一種でありながら全然別物に見えることもあるし,利用のしかたがまるで異なることもある。食用とされるウリ類の果実には苦みのないものが多いが,これら栽培種の祖先にあたるものやあるいは同属の近縁な野生種の果実は,すべてひどく苦い。…

【冬至】より

…これは西洋のサンタ・クロースの伝承にもつながるもので,日本では弘法大師と結びつけ,大師講の行事としているところが少なくない。また,冬至に収穫の感謝や天候占いをする例もあり,カボチャを食べると中風にかからないといったり,ユズ湯に入れば風邪をひかないというところは多い。冬に珍しいカボチャには,おそらく冬の祭りの神供としての意味があったのであり,ユズ湯に入るのは禊(みそぎ)のなごりかとされている。…

※「カボチャ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」