キワタ科の高木で,高さ20m,またはそれ以上になる。基部は板状にはり出す板根に支えられ,枝は直立する幹から水平に輪生して,電信柱のような樹形をつくる。葉は掌状で5~8片に分かれ,果実が成熟するころ短期間落葉する。葉腋(ようえき)から数本の花梗を出し,乳白色の花を1個ずつつける。果実は長楕円形で長さ10~13cm,枝からぶら下がる。内部は5室に分かれ,長毛に包まれた100~150個の種子があり,熟すと割れて,カポック(別名パンヤ)と呼ばれる繊維を露出する。原産地は未確定。カポックとはマレー語で繊維のことで,この種子を包む毛を充てん料にする。アレクサンドロス大王の時代すでにクッションの詰物として珍重したという。繊維は長く光沢があり,耐久力強く弾力に富む。比重が小さく水を通さないため,特に水中救命具の詰物に賞用される。また毒性物質を含むので,害虫の食害を受けにくい。材,葉,樹皮,果実もさまざまに利用され,若芽は野菜とされる。またコーヒーやカカオの庇蔭(ひいん)樹,コショウやバニラの支柱用にする。第2次世界大戦前はジャワとスマトラが大産地であったが,戦後は激減し,インドネシア,カンボジア,フィリピンなどで数千tほど生産されている。なお,近縁のインドワタノキ(キワタともいう)Bombax malabaricum DC.としばしば混同される。また近年,日本でホンコンカポックまたは単にカポックと称して観葉植物が市販されているが,これはウコギ科のSchefflera octophyllaなどで別物である。
執筆者:星川 清親
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