暖地の森林中に散生するイチイ科の常緑針葉樹。社寺の境内などにしばしば大木を見る。高さ25mにもなる高木で,小枝は対生する。葉は螺生(らせい)するが横枝では2列状となり,線形で長さ1.5~2.5cm,先はとがって触ると痛い。雌雄異株で,4~5月に開花し,雄花は前年枝の葉腋(ようえき)に単生して楕円形,おしべは4輪生して多数,雌花は新枝の下部葉腋に2個ずつつく。このうち1個のみが翌年の秋に石果様に熟し,楕円形で長さ約3cm。初め完全に包んでいる紫赤色の仮種皮を割って浅い縦条のある核(種子)を現す。岩手・山形両県から屋久島までと済州島の暖帯林中に散生する。本州日本海側の温帯多雪山地には高さ2mばかりの低木となる変種チャボガヤvar.radicans Nakaiが見られる。材は黄白色で,辺・心材の区別が不明りょうであり,加工性・保存性が高く水湿にも耐えるので,建築・器具・土木用に供されるが,とくに大径木の柾目材は碁盤として最高級品であり,宮崎県産が名高い。種子は胚乳に脂肪油の含有が多く,良質の食用油や整髪油がとれ,食用・薬用にもなる。
カヤ属Torreyaは北米に2種,中国大陸に3種あるが,分布は限られていることが多い。シナガヤT.grandis Fort.の種子はカヤと同様に食用にされ,薬用にも利用される。
執筆者:濱谷 稔夫
ススキ,オギ,チガヤなど,主として屋根をふく材料に用いられるイネ科の植物の総称。古来〈刈屋(かりや)の約〉とか〈上屋(かや)の意〉などその語源について諸説があるが,金思燁によれば〈茅〉にあたる古代朝鮮語が,母音子音ともに日本語の〈カヤ〉に対応しており,朝鮮語に基づく可能性が強い。
執筆者:深津 正 カヤの茎葉は牛馬の飼料や炭俵の材料のほか,とくに屋根ふき材として用いられた。以前は,屋根ふきのために,部落でカヤ野を共有している場合が多かった。そのなごりである〈かやの〉という地名が各地にある。屋根をふくには多量のカヤと労力を必要とし,1軒だけでカヤを集めたり,屋根をふいたりできないため,カヤ講やカヤ無尽といった協同組織を作って,毎年1,2軒ずつ順に屋根ふきをしていった。カヤを刈り取った翌年良質のカヤを得るためには,晩秋にカヤ野を焼き尽くさねばならず,カヤは一種の作物と見なされ管理されていた。
→ススキ
執筆者:飯島 吉晴
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…ススキはこれらの変種,品種を含めて,日本,朝鮮,中国に分布する。 ススキは風情のある秋草として日本人に愛好されていて,月見には欠かせないものであるが,往時はカヤと呼んでかやぶき屋根をふいたり,炭俵を編んだりした。生態的には日本の乾いた草原の優占種で,森林を切るとまずススキが生え,ススキ原を焼くとススキが栄える。…
…茅(カヤ)の箸で食物を食べる7月(旧暦では6月)下旬の行事。新箸の祝ともいう。…
※「カヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...