アゲハチョウの食草になる1属1種のミカン科の落葉低木または小高木。枝にとげがあり,生垣として暖地で広く利用される。枝は緑色扁平で稜角があり,長さ1~7cmの太いとげがある。革質の葉は互生し,3出。葉柄は長さ1~3cmで翼がある。小葉は卵形から楕円形あるいは倒卵形で長さ2.5~6cm,先端は円く頂端は少しへこみ,基部はくさび形,ふちには鋸歯がないか,または鈍鋸歯を有する。春,葉に先だって前年枝に径3.5~5cmの黄白色の花をつけるが,やがて黄色をおびる。花は5弁で香気があり,花梗はない。果実は有毛で球形,黄熟し,径3.5~5cm。中国の原産で古くから日本に伝えられ,各地で栽培されているが,九州や対馬では野生化しているものがある。ミカンの台木にし,かんきつ類との交配も試みられ,属間雑種が育成されている。カラタチやミカン類の成熟直前の果実を輪切りしたものを枳殻(きこく)と称し,薬用(健胃,利尿)とする。またカラタチの未熟果を乾燥したものを枸橘(くきつ)と言い,同様に薬用とする。熟果は飲料にし,マーマレードをつくることもある。
執筆者:初島 住彦
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ミカン科(APG分類:ミカン科)の落葉低木。中国名は枸橘(くきつ)。カラタチ属に属するがミカン属とすることもある。高さ2~3メートル。枝は緑色、扁平(へんぺい)で角張り、大きな刺(とげ)がある。葉は互生し、3小葉からなる複葉で、葉柄に翼がある。小葉は楕円(だえん)形ないし倒卵形、長さ2~3.5センチメートルで、縁(へり)に低鋸歯(きょし)があり、表面に油点(やや透明な精油の小点)がある。4月、葉の展開に先だって、白色、径3~4センチメートルの5弁花を単生する。花弁はへら形で小さく、萼片(がくへん)は5枚、雄しべは約20本で、花柱と子房に短毛を密生する。果実は球形、径約3センチメートルでビロード状の毛があり、10~11月に黄色に熟すが、酸味が強くて食べられない。
中国中部原産で、日本には古代に渡来した。土地はとくに選ばず、強い剪定(せんてい)も可能で、耐寒性があり、北海道南部でも育つ。アゲハチョウ類の幼虫が葉を食害する。繁殖は実生(みしょう)または挿木による。生け垣に用い、ミカン類の接木(つぎき)の台木にする。名は唐橘(からたちばな)の略。キコク(枳殻)と称し、未熟果を健胃の目的で薬用にするが、現在市場で枳殻、枳実(きじつ)の名で取り扱われているものはダイダイ、ミカン、ナツミカンの未熟果がおもである。
[小林義雄 2020年10月16日]
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[分類]
かんきつ類とされるものは,ミカン科ミカン亜科に所属する多数の種で,スウィングルW.T.Swingleの分類による〈真正カンキツ類〉の6属または田中長三郎の分類による〈カンキツ連〉の4属に所属するものである。しかし,通常はカラタチ属Poncirus,キンカン属Fortunella,ミカン属(カンキツ属ともいう)Citrusに含まれるものをかんきつ類という。 カラタチ属はカラタチP.trifoliata Raf.1種だけを含む。…
※「カラタチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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