日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリブ共同体」の意味・わかりやすい解説
カリブ共同体
かりぶきょうどうたい
Caribbean Community
略称CARICOM(カリコム)。カリブ海のイギリス連邦諸国(自治領を含む)が、カリブ自由貿易連合(CARIFTA(カリフタ)、1968年設立)を発展的に解消し、より強力な経済統合を目ざして結成した共同体。1973年1月にイギリスのヨーロッパ共同体(EC)加盟が実現し、これまでのイギリス連邦特恵制度が効力を失うことになったのを機に、CARIFTA加盟諸国の結束をさらに強め、域外諸国に対する交渉力を強化するために、同年7月、カリブ共同体を設立するためのチャガラマス条約が署名され、翌8月に正式発足した。まずカリブ共同市場Caribbean Common Market(CCM)を設立し、それを通して域内貿易の自由化の促進、域外共通関税の設定、域内の工業および農業の開発推進などを図るとともに、加盟国の経済面以外での協力、対外政策の調整なども進めている。本部はガイアナの首都ジョージタウン。
加盟国はバルバドス、ガイアナ、ジャマイカおよびトリニダード・トバゴの主要4か国のほか8か国・地域の計12か国・地域であったが、1983年からバハマが加わり(ただし共同市場には参加していない)、1995年からスリナム、2002年からハイチが正式加盟した。2019年時点の加盟国・地域は、アンティグア・バーブーダ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ドミニカ、グレナダ、ガイアナ、ハイチ、ジャマイカ、セント・クリストファー・ネイビス、セント・ルシア、セント・ビンセント・グレナディーンズ、スリナム、トリニダード・トバゴの14か国とイギリス領モントセラトの1地域。
1980年代末から1990年代初めにかけて、地域内の経済統合の再活性化を図る動きが強まり、ほとんどの域内貿易に対する障害は自由化され、さらに、CARICOM単一市場・経済(CSME)設立の九つの議定書が署名された。また、それらを統合・改訂した改訂チャガラマス条約が2001年に署名された。この条約は域内の企業設立、サービスの提供、資本移動などの制限撤廃、製品の基準・規格の統一、域内の人的移動の促進などの共同市場の強化・拡大の体制づくりを進めるとした。2006年1月に、バルバドス、ベリーズ、ガイアナなど6か国が、同年7月にはドミニカやグレナダなどほかの加盟6か国が加わってカリコム単一市場(CSM)が始まった。カリコム単一経済(CSE)については2019年9月時点で実施に至っていない。
[相原 光・秋山憲治]