カルスト地形(読み)カルストちけい

精選版 日本国語大辞典 「カルスト地形」の意味・読み・例文・類語

カルスト‐ちけい【カルスト地形】

〘名〙 石灰岩雨水地下水などの化学的浸食作用を受けてできた地形。形によって、カルスト台地カレンフェルトドリーネ鍾乳洞(しょうにゅうどう)などに分ける。スロベニアカルスト地方発達日本では山口県秋吉台、福岡県平尾台、大分県小半鍾乳洞など。カルスト。

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デジタル大辞泉 「カルスト地形」の意味・読み・例文・類語

カルスト‐ちけい【カルスト地形】

石灰岩地域で、雨水・地下水などの溶食によって生じた特殊な地形。ドリーネカレンフェルト鍾乳洞しょうにゅうどうなどが形成される。
[補説]スロベニア北西部のクラスドイツ語でカルスト)地方に由来する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルスト地形」の意味・わかりやすい解説

カルスト地形
かるすとちけい

石灰岩地域に発達する特殊な侵食(溶解侵食=溶食)地形の総称。この名称は、スロベニア北西部カルスト地方に多く分布することに由来する。これは、石灰岩の主成分である炭酸カルシウムが、炭酸ガスを含んだ雨水や地下水に溶解されてつくられる、鍾乳洞(しょうにゅうどう)、ドリーネ、ウバーレポリエ、カレンフェルトなどの特殊な地形のことをいう。

 溶食を原因とするカルスト地形は、石灰岩層が薄かったり、寒冷で乾燥した地域においては発達しがたい。適度に降水量のある地域では、雨が石灰岩中の割れ目に浸透してしだいに溶解し、地中に水の通路を縦横につくる。このときからカルスト地形の一連の系統的な溶食過程を経た地形変化がみられるが、これをカルスト輪廻(りんね)という。

[三井嘉都夫]

カルスト輪廻

石灰岩地域で溶食が始まる以前の地形を原地形とすると、石灰岩中の割れ目の部分が溶食され、その上部が陥没して表面にドリーネとよばれる円形の凹地(おうち)が形成される時期が幼年期である。ドリーネが発達して隣接するドリーネを結合して大きな凹地のウバーレをつくり、さらに凹地が拡大するとポリエとなる。さらに溶食が進むと石灰岩の表面に多くの溝(みぞ)が生じ、これが発達するとカレンフェルトができる。ここまでが壮年期である。なおも溶食が進むと錐(きり)形にとがった丘陵状の地形コックピットがつくられるが、これらの残丘群もやがては低まり、盆地床に続くなだらかな起伏地となる。このような状態が老年期である。

 ドリーネ、ウバーレ、ポリエなどの底部は肥沃(ひよく)なテラロッサとよばれる土壌で覆われ、耕地や集落に多く利用されている。カルスト地形は、外国ではバルカン半島、中国の雲南省などに多く分布している。日本では広大なカルスト地形は乏しいが、山口県秋吉台、福岡県平尾台、広島県帝釈(たいしゃく)台、愛媛県大野ヶ原などに発達している。

[三井嘉都夫]


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百科事典マイペディア 「カルスト地形」の意味・わかりやすい解説

カルスト地形【カルストちけい】

石灰岩地域で溶食により形成される独特な地形。スロベニアのカルスト地方に標式的に発達する。溶食による地形変化は溶食輪廻(りんね)またはカルスト輪廻と呼ばれる。地表では,石灰岩の節理や断層に沿って溝状に溶食が進み,不規則な起伏のある地形(カレンフェルド)が形成され,そこに石灰岩柱の林立することがある。他方,地下では複雑な石灰洞(鍾乳洞(しょうにゅうどう))がつくられる。地表水の石灰洞への流入口は拡大し漏斗(ろうと)状のドリーネに発展する。さらに,隣り合うドリーネが拡大し連合してウバーレに発展し,ついには細長い平面形の溶食盆地が形成され,その大規模のものはポリエと呼ばれる。溶食盆地が拡大し,互いに結合し合うとやがて島状に小丘を残すカルスト準平原が出現する。→秋吉台国定公園平尾台
→関連項目ウバーレ沖永良部島北九州国定公園ヘルツェゴビナ与論島

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルスト地形」の意味・わかりやすい解説

カルスト地形
カルストちけい
karst topography

地表に露出した石灰岩が,二酸化炭素を含んだ雨水によって溶食されてできる地形。呼称はこの地形の発達しているスロベニア,クロアチアのカルスト地方に由来する。石灰岩地域に降った水は,表面を流れたり,石灰岩中に存在する節理,断層面,層理面に沿って浸透しながら,接触した石灰岩を溶食する。この結果ドリーネウバーレ,コックピット,カレンフェルトなどの地形がつくられ,地下には石灰洞が形成される。降水はほとんど地下に浸透するため表流水はなく,湿潤地域でもV字谷は形成されない。日本では山口県の秋吉台,福岡県の平尾台が有名。

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世界大百科事典 第2版 「カルスト地形」の意味・わかりやすい解説

カルストちけい【カルスト地形 karst landform】

石灰岩をはじめドロマイト,チョーク,岩塩など可溶性の成分からなる岩石がみられるところで,溶食作用に関連して生ずる諸地形。石灰岩の主成分である炭酸カルシウムCaCO3は,二酸化炭素CO2を含む雨水や地表流,地下水によって溶解されるので,その結果,石灰岩露頭の表面および地下には種々の特殊な溶食地形が見られ,特殊な景観がつくり出される。カルストという学術用語は,岩石を意味するクルスまたはクラスというスラブ語のドイツ語化で,ユーゴスラビア北西部の石灰岩地域の地方名カルストに由来している。

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世界大百科事典内のカルスト地形の言及

【秋吉台】より

…大正末年秋吉台における地層の逆転構造の発見以来,日本列島の複雑な地殻変動を解明する重要な学術研究地として注目されている。石灰岩地では雨水や地下水の溶解作用によって特有のカルスト地形が発達する。秋吉台上には河流がなく,これにかわって地下水系が発達し,秋芳(あきよし)洞(特天)・大正洞(天)・景清穴(天)・中尾洞(天)などの大鍾乳洞を発達させるほか,200以上にも及ぶ大小の洞窟があり,台麓には地下水の出口である湧泉が数多く分布する。…

【地形】より

…さらに石灰岩は炭酸ガスを含む水に溶けるため地表流が発達しにくいのも台地面を保存しやすくする原因である。溶食の結果生じたドリーネ,ウバーレなどのくぼ地や地下水の溶食による地下の鍾乳洞の発達などは,石灰岩に伴う特有の溶食地形であり,カルスト地形といわれる。日本では石灰岩の分布は断片的であるが,欧米,中国などでは石灰岩分布の規模が大きく,著名なカルスト地形の例が多い。…

※「カルスト地形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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